自民党新総裁に選出された石破氏(中央)
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 過去最多の9人の候補者が乱立した自民党総裁選を制したのは、総裁選5度目の挑戦となった石破茂元幹事長(67)だった。10月1日召集の臨時国会で、第102代首相に選ばれる見通しの石破氏だが、さっそく様々な課題が待ち受けている。AERA10月7日号から。

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 最後まで「誰が勝つかわからない」と言われた中、接戦を制したのは石破茂氏だった。

「国民を信じ、勇気と真心をもって真実を語り、この日本国をもう一度、みなが笑顔で暮らせる安全で安心な国にするために、石破茂、全身全霊を尽くしてまいります」

 27日午後、高市早苗氏との決選投票を制して第28代自民党総裁に選出されると、第一声で、やや顔を紅潮させながらこう語った。「最後の戦い」として5度目の総裁選に挑み、ついに勝利をつかんだ。第1回投票では高市氏に次ぐ票数だったが、決選投票では21票差という僅差で高市氏を上回った。

 総裁任期は3年。10月1日に召集される臨時国会で、第102代首相に選出される見通しだ。

 石破氏はどのように政権運営に臨むのか。氏の「売り」は、地方創生相や党幹事長など、政治歴38年で培った経験だ。

 政治学者で東京大学名誉教授の御厨貴さんは、石破氏についてこう評する。

「この約10年間、石破さんは総裁選で破れ続けました。だけど、挑戦し続けたことも事実で、最後の最後に栄冠を得た。今まで日の当たる道を歩いてきた人たちと一味違う。その粘りと、自分はこれはやるという迫力を見せれば、みんながついてくるのではないか。しかも、裏金問題について踏み込んでやろうとしているので、裏金について何かやってくれるという期待はあります」

 だが、今回の総裁選でも明らかになったが、石破氏は自民党内での支持が低く、支えてくれる議員も少ない。今回は、高市氏の憲法改正や靖国神社参拝など、右寄りのイデオロギーに警戒心を抱き、石破氏に投票した議員も少なくなかったはず。総理になって政策レベルで様々な取り組みをしていく中で、全員が石破氏に賛成するのか疑問が残る、という。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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