平川理恵さん(ひらかわ・りえ)/1991年、リクルート入社。99年、留学仲介会社を起業。2010年、横浜市の公立中学校の校長に着任。24年3月まで広島県教育長(写真:本人提供)
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 内申書の簡素化、公立高校入試に自己表現を導入するなど広島県では教育改革が進んでいる。前・広島県教育長の平川理恵さんに話を聞いた。AERA 2024年9月30日号の記事より。

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 2024年3月まで広島県教育委員会教育長を務めた平川理恵さんは、リクルート社員、横浜市の公立中学校で民間人校長、と教育長としては異色の経歴を歩んできた。平川さんが教育長のあいだ、広島県では内申書の簡素化、公立高校入試に自己表現を導入、不登校児のための拠点作りなど教育改革が実現された。

「今の学校は『みんなと一緒』と教えすぎています。受け狙いの上っ面のプレゼンとか、テストに強い子とか、根源的でない教育を続けていくと、『いつも元気で明るいが人間的に深みがない』とか『テストには強いけど、人生が何たるかわかってない』という人間になってしまいます」

 まず取り組んだのが職員との対話だ。教育長に着任して2カ月経った頃、一つの部署の課長から若手までを集めて「あなたの部署は何をするところですか」と質問をすることがあったという。

 例えば「生徒指導を通して、子どもたちのウェルビーイングを実現します」と返事がある。

 そこで、平川さんは「この間、私が見てきた学校では、忘れ物の貼り出しをしていました。人権無視に当たりませんか」と学校の写真を見せた。

「教育委員会の中で机上の空論ばかり立てても仕方なくて、改善点は現場にあります。カリキュラム、そしてカルチャー、システムを変えるぞ、といつも考えていました」

 ある課は、いじめなど命に関わる緊急事案を抱えて、不登校支援への手が回っていなかった。そのため、不登校支援は不登校支援センターという新たな部署を作った。

「職員の定数は増やせないので、仕事の取捨選択をして必要な部署を立ち上げました」

 商業高校の生徒にビジネスの楽しさを伝えるため、商業高校の教員とアメリカのビジネスハイスクールを視察した。

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