■メンタルはどこにでもいる15歳男子

「パパと練習しなかったの?」と言うと、「は?できるし」と言い、ドアを閉められてしまいました。身体が不自由でもメンタルはどこにでもいる15歳男子なので、親子でコミュニケーションをとるのがとても難しい時期です。特に身体のことに関しては、「苦手なことは努力だけではどうにもならない」と分かりつつも、両親に口出しされたり、いちいち助けられたりするのは嫌なようです。結局、家族にできるのは見守ることしかないのですね。この日は遅刻ギリギリまで好きなようにしてもらうことにしましたが、最後は諦めてネクタイをほどいて持参しました。帰宅後に聞くと、親友くんが練習に付き合ってくれて写真は撮れたとのことでした。今までにもこうした葛藤は何度もありましたが、そのたびに何とか自分で乗り越えてきました。こうした経験が積み重なって生きる力になっていくのかもしれませんね。

■協力してもらう術を身につけた息子

 中学生になった時は、初めてのYシャツで小さなボタンがとめられず、とても苦労しました。最初は1カ所をとめるだけで1分以上かかり、真ん中あたりまで来たときに、ひとつ抜かしていたことに気づく……ということも何度もありました。この頃はまだ私にも、周りのお子さんと同じようにさせなくてはと焦りがあり、必死に練習をさせたり、違うボタンを代用できないかと考えたり、先回りして心配したものです。でもこの姿を最後に、中学校生活では私の目が届かないところへ行ってしまい、息子の自立を感じるようになりました。困りごとは先生や親友くんに相談し、協力してもらう術を身につけられたことが大きかったと思います。そしてそれから3年がたち、現在の環境であれば今回のネクタイ問題は本人に任せても何とかなるように思いました。こうして送り出した私自身の変化にも驚きつつ、子どもは常に進化していくものなのですね。

 新しい春。楽しい生活を送れますように。

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