なぜカクレクマノミかといいますと、この魚は性転換をすることで大変有名だからです。カクレクマノミは複数の個体が集まり、群れで生活をしますが、その性は身体の大きさで決まっています。群れの中で1番目に身体が大きい個体がメス、2番目に大きい個体がオスです。3番目以降の個体は性的に未成熟な状態(成熟していないオスの予備軍)で、生殖には参加しません。

 メスが死んでしまったり、集団からいなくなったりすると、2番目に大きかった個体が1番になりますので、メスに性転換します。そして3番目に大きかった個体が、性的に成熟してオスになります。つまり、カクレクマノミたちは、生涯のうちにオスである時期とメスである時期の両方を経験する、ということです。

 ちなみに、カクレクマノミはオスからメスへの転換のみが可能で、その逆はできないといわれています。

 魚類は多くの種で性転換を行うことが知られていますが、性転換の方向性によって、3つのグループに分けられています。オスからメスのみに性転換するタイプを雄性先熟型といい、カクレクマノミの他にクロダイやコチなどの魚が知られています。

 逆にメスからオスの方向にのみ性転換する雌性先熟型には、マハタ、キュウセン、キンギョハタダイなどがいます。さらに、オスからメスへ、また、メスからオスへと両方向へと性転換できるタイプも存在し、これを両方向型とよび、オキナワベニハゼという魚が大変有名です。

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