※写真はイメージです。本文とは関係ありません(MichaelStubblefield / iStock / Getty Images Plus)
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 性別はオスとメスだけではない。北海道大学の黒岩麻里教授の最新作『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』では、生物界の様々な性のあり方を紹介している。アッと驚く性の多様性を本書より一部抜粋、再構成してお届けする。

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雌雄は別個体でなくていい

  生物学的には、卵巣をもち卵子をつくる個体をメス、精巣をもち精子をつくる個体をオスと定義づけますが、雌雄は別々の個体である必要はありません。

 個体ごとにオスとメスが分かれている場合を「雌雄異体」とよびます。

 一方で、ひとつの個体の中に、オスの生殖器官とメスの生殖器官の両方をあわせもつ生物もたくさん存在します。こういった生物は「雌雄同体」とよばれています。

 雌雄同体で代表的なのは植物です。

 被子植物の多くは雌雄同体ですが、いくつかのパターンに分かれることが知られています。ひとつの花におしべとめしべが共存している場合を両性花とよび、被子植物のほとんどがこのパターンです。

 また、めしべだけをもつ雌花、おしべだけをもつ雄花も存在し、これらは単性花とよばれます。単性花をもつ植物は、キュウリやカボチャなど、ウリ科の植物が知られています。

 ただし、ひとつの株(1個体)が雌花と雄花の両方をもつため、単性花の場合も雌雄同体のひとつのパターンとして考えられており「雌雄同株」ともよばれます。

 数としては少ないですが、株ごとに雌花だけをつける、雄花だけをつける植物も知られています。私が所属する北海道大学のキャンパスには、ポプラ並木やイチョウ並木といった、大変美しくて有名な観光名所となっているスポットがありますが、ポプラやイチョウは株(木)ごとに性が分かれており、「雌雄異株」とよばれています。

 その他、ホウレンソウやアスパラガス、裸子植物などが雌雄異株として知られています。

 植物の進化では、雌雄同体(両性花)が基本であり、両性花のめしべあるいはおしべが退化することで、単性花が生まれたと考えられています。つまり、もともと雌雄は共存しているものであったということです。

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