黒岩麻里『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』(朝日新聞出版)
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第3の性

 ある生物種は雌雄異体のみ、またある種は雌雄同体のみ、と、両者は明確に分けられているわけではありません。ボルボックスという藻類の仲間は、雌雄同株の両性個体のみが存在するグループ、オスとメスが分かれた雌雄異株のみが存在するグループ、両性個体、オス個体、メス個体の3種類が共存するグループがあります。共存しているグループは、オスとメスが分かれている種から両性型の種へと進化する途中であると考えられており、第3の性である両性と共存している状態ともいえます。

 そのほかにも、雌雄同体と雌雄異体が共存している生物がいることは知られています。

 また、線虫という線形動物は、世界的に広く使われている研究のモデル生物ですが、ほとんどの個体がXX型の性染色体をもつ両性個体です。基本的には両性個体で生殖し、ごく稀にX染色体1本のみをもつXO型の個体が生まれ、これはオスとなります。オス個体は全体の0.1%程度しか存在しないといわれています。

 様々な生物を見てみると、必ずしもオスとメスが別々に存在するわけではなく、また、オス個体、メス個体、両性個体が共存している状態も、珍しくないということがわかります。

個体の性は普遍的ではない

 様々な生物を見ると、性はオスかメスかといった画一的なものではないことがわかります。

 そもそも、性はオスとメスの2タイプのみとは限らないし、オスとメスの中にも、バリエーションがあります。さらに、性のタイプは固定的ではなく、その個体が生きている生涯の中で変化することも知られています。

 これまで、私は、性決定や性染色体について話してほしいとの依頼を受けて、テレビの科学番組などに何度か出演したことがあります。

 そして、多くの番組で「カクレクマノミの話をしてほしい」とのリクエストを受けます。

 私は魚の研究者ではないのですが、有名なアニメ映画の主人公にもなるほどの可愛らしい見た目とその人気の高さから、よほどテレビ向きなのでしょう。美しい大きな水槽に入れられたカクレクマノミたちが、収録スタジオに準備されていたこともあります。

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