流山おおたかの森駅の周辺には大規模マンションが立ち並ぶ(撮影/國府田英之)
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 子育て世代が流入し、人口増に成功した街として注目されている千葉県流山市。だが、実は空き家も増加し続けており、昭和に開発された古い住宅街だけではなく、ファミリー層でにぎわうつくばエクスプレス(TX)沿線の住宅地でも、空き家が出始めている。「深刻化する前に、空き家が生まれてしまう原因を断つ」と、地元の有志が動き始めた。

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 2005年のつくばエクスプレス開通に伴う大規模開発で、子育て世代の人口が急増した流山市。16~21年まで、6年連続で人口増加率が全国の市町村で1位になった。

 民間の有識者らで作る「人口戦略会議」が今年4月に公表した、100年後も若い女性が5割近く残り、持続している可能性が高いとした「自立持続可能性自治体」の一つにも選ばれている。

 人口増加に成功して脚光を浴びるベッドタウンとしてのイメージが定着し、TXの「流山おおたかの森」駅前には大型ショッピングセンターやマンションが林立し、日中はファミリー層らでにぎわう。

 だが実際のところ、盛んにPRされるTX沿線のきらびやかなイメージは流山の一面でしかなく、多くの自治体と同様に、古い住宅街には高齢化の波が押し寄せている。

 例えば市の北部で、1950年代後半から開発された東武アーバンパークライン「江戸川台」駅周辺は、昔は夏祭りが開かれるなどにぎわっていたが、今では駅前商店街はシャッターが目立ち、住宅街ではすでに空き家が増加。「空き家予備軍」と見られる一戸建ても目立つ。

 それだけではない。

 TXの駅から徒歩圏内で、新旧の一戸建てが並ぶ住宅街でも、空き家や予備軍が出始めているという。駅近くの至便なエリアであり、駅前のにぎわいからは想像がつかない。

 08年に5490戸だった市内の空き家は、10年後の18年には7420戸にまで増えた。

 そんな現状に危機感を抱いた地元有志が、この夏に「流山・空き家を生まないプロジェクト」を立ち上げ、8月から始動した。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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