流山市内の空き家。画像を加工しています(撮影/國府田英之)

空き家問題は「予想された未来」

 プロジェクトの代表で地元の不動産会社「Myla」代表取締役の石射正曜(いしい・ただあき)さんは自ら市内を歩き、空き家の現状を確認したという。

「庭の木が伸びてすでに隣家や道路に越境していたり、庭が荒れ果ててハチや虫の大量発生、動物が住みつくリスクがあるように感じた管理不全の空き家が30以上確認できました」(石射さん)

 空き家を放置すれば、何者かのたまり場になったり、犯罪に利用されるリスクもゼロではない。若い世代でにぎわう、住みたい街として人気のエリアと、高齢化の波が一気に押し寄せるエリアと二極化しているのが流山の現状なのだ。

 福島県出身の石射さんは16年に流山に移り住んできたが、「昔からある住宅街に人が再び来てくれる循環をつくりたい。そこに人を呼ぶ努力をしなければいけないと考えています」と強調する。

 プロジェクトが目指すのは、その名の通り、「空き家を生まない」こと。つまり、空き家になる以前の対策に重点を置いた活動だ。

 石射さんによると、空き家が生じる理由は主に、相続人が高齢で地元にいない。さらには、その家に関心がない、といったケースが目立つという。

 プロジェクトでは、一戸建ての所有者らに、資産活用や処分の仕方、空き家になってしまったあとのリスクなどを教えるセミナーを開催したり、自治会長などを通じて空き家予備軍の一戸建ての所有者にアプローチし、対応をアドバイスするといった活動を検討しているという。

 筆者も流山育ちだが、TX開通以前は人が集まる中心街がなく、森や畑だらけの「のどかな街」だった。目立った産業もなく、独立後に市内に残っている同年代は非常に少ない。いま押し寄せている空き家問題は、「予想された未来」だったかもしれない。

 空き家などなかったはずの住宅地に、庭が荒れ放題になっている家が確かにある。近所に住む40代の主婦は「長く空き家のままで、どんどん木や草が伸びて怖い感じになっていく。怖くないと言えばウソですよね」と本音を漏らす。

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治安悪化につながる