キングメーカーの座を争う麻生氏(左)と菅氏

「女性票が高市氏に集中すると難しい」

 自民党の元政務調査役で、総裁選は党員投票が始まった1978年から見てきたという政治評論家の田村重信氏によると、上川氏は麻生氏だけではなく、小泉氏を支援している菅義偉元首相からも評価が高いという。

「9人出馬して、女性が高市氏だけとなれば、世間的には『自民党はどうなんだ』となります。上川氏自身、次の総理をきく世論調査では、同じ旧岸田派の林氏の上をいっている。それで出馬できないと、『どうなんだ』という気持ちがあったでしょう。それに高市氏は、キングメーカーの座を争う麻生氏や菅氏と微妙な距離感がある。2人とも、決選投票になる可能性が高いなか、党員の女性票が高市氏に集中すると、戦略的に難しいと判断した。そこで高市氏の対抗に上川氏も、となったと聞いた」

 田村氏は、今回の総裁選では、将来を見据えた高市氏と上川氏の争いもあると見る。

「これまで高市氏は小泉氏、石破氏にどう迫れるかがポイントでした。しかし上川氏という強敵が出たことで、女性には負けられないという、もう一つのポイントが増えた。もし高市氏が前回の3位にも入れない、ましてや上川氏より下になれば、もう次は厳しいでしょう」

 総裁選の立候補者の推薦人名簿を見ると、高市氏の推薦人には裏金にかかわった議員が多数並んでいる。上川氏の推薦人に裏金議員は少ないが、旧統一教会と関係が深いとされ、最近は兵庫県の斎藤元彦知事の選挙を応援して報酬をもらっていたことが問題視された盛山正仁文科相の名前がある。田村氏はこう話す。

「各候補とも推薦を受ける議員の問題など不安材料がありますが、上川氏は最後に表明したのでメディアに突っ込まれる時間があまりなくてラッキーでした。総裁選、これが怖いんです」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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