荒木千衣氏(会社員・チョコレート探究家)と後藤宗明氏(ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)(撮影すべて・上田泰世/朝日新聞出版写真映像部)
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 人生100年時代と言われて久しい。定年や再雇用に関する制度改正も、次々と進められており、2025年4月からは、「65歳までの雇用確保」が完全義務化される。定年が見えてくる会社勤めの40代後半~50代の人には、早期退職や役職定年といった言葉が、自身に迫ってきているかもしれない。一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事で、『中高年リスキリング』(朝日新書)の著者である後藤宗明氏は、「これからも必要とされる働き方を手に入れる」ための一番の解決策は「リスキリング(reskilling)」だと述べる。

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 リスキリングには「(個人の)学び直し」という意味が独り歩きをしているが、後藤氏は「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」と捉えている。

 また後藤氏は「勤務している会社を退職して新しい環境に身を置くことがリスキリングではない」ともいう。

 ここでは、出版社に勤めながら、チョコレート探究家・ライターになった荒木千衣氏が実際に行動した内容から、リスキリングのヒントを見つけていきたい。

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自分から動かないと、手に入らない

後藤:初めて会ったのは、2002年に僕がニューヨークで起業したグローバル人材育成を行うスタートアップのときでしたね。

荒木:図書館の司書になりたくて、大学時代にニューヨークに行ってあらゆる図書館を見学しました。そのときに、後藤さんが立ち上げた事業を知って、問い合わせたのがきっかけです。

 教員にもなりたかったので、大学時代は塾の講師のアルバイトもしていました。大学に入って初めて、親元を離れての1人暮らし。その時に感じたのが「自分が動かなければ何も叶わない」ということ。

 それまでは、親に言われたことに従っていた人生でしたが、1人になってみて、「手に入れたいと思ったものは、自分から動かないと手に入れられない」ということを強く感じたんです。

 大学時代に教授から言われた言葉で覚えているのが「自分が興味あることに関しては自ら勉強するかもしれないけれど、世の中のことをもうちょっと満遍なく知っていた方がいい」です。

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