巨人の坂本勇人
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 優勝を争う終盤戦で頼りになるのは、百戦錬磨のベテランだ。巨人は首位攻防戦となった9月10日の広島戦で6-1と快勝。チームを勢いづけたのはプロ18年目、35歳の坂本勇人の一撃だった。「2番・三塁」でスタメン出場し、初回に森下暢仁の145キロ直球を左翼2階席に運ぶ先制の6号ソロ。試合の流れを引き寄せると、3回にも左前打とマルチ安打の活躍で勝利に貢献した。

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 ただ、今年の坂本は好調がなかなか持続しない。ここまで94試合出場で打率.237、6本塁打、27打点。打率はレギュラーに定着した高卒2年目の08年以降で自己ワーストだ。昨年終盤に三塁にコンバートされ、初めて三塁手としてスタートした今季は、打撃での試行錯誤が続く。阿部慎之助監督は当初、坂本を5番に据え、岡本和真の後を打つポイントゲッターとして期待していたが、得点圏でブレーキになる機会が目立つようになり、6月26日に登録抹消された。7月12日に1軍昇格後は復調の兆しを見せたが、爆発力を欠く。

 他球団のスコアラーはこう分析する。

「今年は捉えたと思った打球がフェンスを越えなかったり、外野の間を抜けなかったりするケースが目立ちます。坂本の魅力はバットコントロールの巧さです。内角をさばき、左翼線にはじき返す技術は球界屈指でしょう。外角の球も泳ぎながらヒットゾーンに運ぶのがうまい。スイングスピードの速さに定評がある打者ではないので、その数値で衰えを指摘するのは違うかなと感じます。結果が出ない焦りから、ストライクゾーンに狂いが生じて外角のボール球にも手を出すようになっている。ここまで試行錯誤したシーズンは今までなかったでしょうし、焦りはあると思います」

 坂本は2012年に最多安打のタイトルを獲得し、16年にはセ・リーグの遊撃手初の首位打者に。19年にはキャリアハイの40本塁打、94打点でリーグ優勝に貢献してMVPに選出され、20年には右打者で最年少の31歳10カ月で通算2000本安打を達成。これまでいくつもの金字塔を打ち立ててきた。

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最近15試合の坂本スタメン試合は驚異の勝率