古い考えに影響される候補者が生まれる「仕組み」
しかし、もう少し考えると、より深刻なことが思い浮かぶ。
それは、立憲で自民党と同じことが起きているということだ。
自民党の総裁選では、8月6日配信の本コラム「自民、立憲ともに民意が反映されない代表選は変えるべき “時代を変えるリーダー”を選ぶ『4つ』の改善点」に書いた通り、総裁になるためには総裁選の決選投票(1回目の投票の上位2人で争われる)で勝つことが必要だ。
最初の投票では、国会議員票と党員・党友票の割合が同じだが、決選投票では、党員・党友票は47都道府県ごとに集約されて、47票にしかカウントされない。したがって、1人1票で369票(8月20日時点)になる国会議員票の重要性が非常に高くなる。しかも、そこでは、なくなったはずの派閥がまだ影響力を持つと予想されている。
そのため、候補者は、公約に自分の考えを単純に書くわけにはいかず、旧派閥のリーダーをはじめ、党内の有力者に媚びる政策を掲げる必要があるのだ。
現に、河野太郎氏や小泉進次郎氏が脱原発の考えを封印している。石破茂氏が裏金議員の公認問題に触れた後に党内の反発を受けてトーンダウンしたとも伝えられる。
立憲ではそういうことがないと思う人もいるだろうが、今回の枝野氏の政治資金に関する提案を見ると、きっとあの人に気を遣って立憲の本来の提案を後退させたのだろうなということが思い浮かぶ。
例えば、企業・団体献金の禁止については、今も企業や団体からかなりの寄付を受け取っている大物政治家がいる。また、政治資金パーティーで資金を稼いでいる幹部もいて、実は、国会での立憲の提案を作る際に彼らはかなり強い反対をしていた。
政策活動費についても、立憲の役員として活動する人たちが、ぜひ、そういう金をもらいたいと考えているのは想像に難くない。
そういう古い考えに候補者が影響される理由は、立憲の代表選の仕組みにある。
1回目の投票では国会議員(136人)に1人2ポイント、国政選挙公認予定者(98人)に1人1ポイント、地方議員(1236人)と党員・協力党員に各185ポイントが割り振られる。全体で740ポイントのうち、党員・協力党員の割合は、185/740で、たったの25%だ。自民党が国会議員票と党員票を同じ割合にしているのに比べて、非常に低い。
過半数を取る候補者がなかった場合には、上位2人による決選投票になるが、票数の配分は、国会議員1人2ポイント、公認予定者1人1ポイント、都道府県連ごとに1人割り当てられる代表者が各1ポイントなので、計417ポイントのうちで1割ほどの都道府県代表者の47票の中に埋没してしまう。これはほぼ自民並みと言えるが、1回目と2回目を合わせた全体として見れば、一般党員の声が選挙に反映される割合は、自民党より小さいと言って良いだろう。