言いくるめが得意な「弁護士」枝野
したがって、枝野氏としては、政治資金規制について、「行き過ぎた」と党の実力者たちの多くが考えている立憲の前国会での提案をそのまま書くことはできず、大幅に後退させた内容を書かざるを得なかったというのが私の推測だ。
そして、後退した内容を後退していないように見せかけて表現したのだが、そこは、「弁護士」枝野の面目躍如。狙い通り、記者会見でも、批判的な質問は出なかった。
同じく代表選に立候補表明している野田佳彦元首相は、9月5日になって、「政権交代前夜」というタイトルで公約を発表した。そこには、いかにも立憲の提案を守るような言葉が並んでいるが、この人もまた人を言いくるめるのが得意な人だ。
そう思ってよく見ると、ここにもおかしな言葉が紛れ込んでいた。それは、政治資金パーティーについてだ。「企業・団体によるパーティー券購入の禁止」とある。つまり、個人向けの政治資金パーティーは残すということだ。しかも、そこには括弧書きで、「(まずは、徹底的なガラス張り化)」とある。なんのことはない。企業団体向けのパーティーも当面は残すということを「ガラス張り化」という前向きな言葉を使って間接的に表明している。
これもかなり手の込んだ詐欺的手法だ。この点は、実は、記者会見でバレてしまって、立憲の提案を後退させたことを認めざるを得なかった。
泉健太代表も立候補に漕ぎ着けたが、これまでの実績から見ると、党内実力者から独立して政策を遂行する力はなさそうだ。
最後に告示日当日に江田憲司氏の支援を受けて立候補した吉田晴美氏は、4人の候補者の中で最も政治資金改革に前向きな候補であるとみられる。
ただし、次の立憲代表として有力なのは、枝野氏か野田氏だというのが一般的な見方のようだ。仮に、この二人のうちのどちらかが代表になれば、前に見たとおり、政治資金改革は、「確実に後退する」。そうなれば、来るべき総選挙において、自民党を厳しく追及することができなくなるだろう。
推薦人集めで苦戦して立候補を断念した江田憲司・立憲元代表代行は立憲の本来の提案を守る姿勢を見せていただけに、こういう候補が立候補できないという今の立憲の代表選のルールは極めて大きな問題であることがあらためて証明された。
推薦人20人というハードルを下げることを頑なに拒否し続けた立憲幹部たちは、実は、この問題で立憲の国会での提案を「リセット」するために、20人を維持しようとしたのではないか。そんなことまで考えさせる、ここまでの展開だ。
マスコミは、立憲の政治資金改革の提案がどうなるのか、また、なぜ自民党よりも代表選立候補のハードルを高くしているのかという問題について、もっと深掘りして報道すべきだ。