立憲民主党代表選の討論会で握手する(右から)野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員=24年9月

「視野に入れるだけ」の企業団体献金の禁止

 つまり、企業団体献金は認めるということだ。「まずは少なくとも」と書いてあるので、将来は禁止するのかと思うと、「禁止を視野に」としか書いていない。将来禁止すると明言していないのだ。

 さらに、驚いたことに、禁止を視野に入れて、「他の政党や国民世論に向けた働きかけを粘り強く進める」と書いてある。 約束しているのは禁止ではなく、それを「視野に」「働きかける」だけなのだ。これでは、禁止しなくても、働きかければ、この公約は実現したことになる。周到に逃げ道を用意したというわけだ。

 しかも、「国民に」粘り強く働きかけるという意味がわからない。国民は企業・団体献金の禁止に反対しているとでもいうのだろうか。

 枝野氏は、年によって、10万円から数十万円単位で複数の団体から献金を受けているようだ。これをやめたくないのだと勘ぐられても仕方ないが、そんなことのために大事な公約を捻じ曲げるだろうか。それも立憲が国会で正式に提案していた内容を大きく後退させるのはなぜなのか、大きな疑問だ。

 次に、政治資金パーティーについての提案の後退はさらに深刻だ。「一円単位での公開を実現する」と書いたのは、企業・団体献金についてと同じだ。しかし、将来については、禁止の「き」の字も出てこない。禁止を視野に働きかけることもせず、一円単位の公開で終わり。パーティーはこれからも存続させると読める。

 立憲の提案は反故にされた。

 さらに「政策活動費」についても、立憲の提案では、禁止だったのに、枝野氏の公約では「透明化」だけ。つまり政策活動費は残すのだ。しかも、ここでは「一円単位の公開」という表現を避けている。抽象的に「透明化」という言葉にしたことは、曖昧な使途の報告で許されるような政策活動費の温存を狙っていると考えられる。

 政策活動費は、巨額の資金を政党からその幹部などに渡し切りで提供し、使途を明らかにしないものだ。枝野氏が代表になったときのことを考えて、これをもらいたいと考えていると取られても仕方ない。

 枝野氏は、非常に前向きに聞こえる言葉をちりばめているため、記者たちもよく読まないで、特に変わったことはないと判断してしまったのかもしれない。朝日新聞では、枝野氏の「立憲は政治腐敗を一掃する政党」だという言葉を引用して、「政治改革に取り組む姿勢を見せた」と持ち上げたほどだ。

 ここまで読んだ人は、枝野氏がとんでもない悪人だと思ってしまうかもしれない。確かに立憲の素晴らしい提案を骨抜きにしようとしているという点では、そうした評価を受けてもやむを得ない。

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立憲代表戦も自民党と同じ?