※写真はイメージです。本文とは関係ありません(gettyimages)

 そういう時に、「好きなことは何?」「得意なことは何?」「苦手なことは何?」「俳優以外にしたかったことはない?」「俳優の次に好きな仕事は何?」「どんな仕事が好き?」「どんな仕事が嫌?」と、少しずつ丁寧に、夫の悩みを明確にしていければと思うのです。

 僕がよく言っている「悩むことと考えることを区別する」ということです。

 俳優を辞めた後、俳優だったスキルを使う仕事で、やりがいを感じている人を僕は何人も知っています。「人前に出ることに慣れている」「声が大きくて、ハキハキしている」「人間関係にもまれることに耐性がある」なんて特徴です。

 トランスさんの夫は、俳優を続ける間のバイトとして今の仕事を始めたのでしょうか?もしそうなら、第一希望が俳優でしたから、バイトを選ぶ時に、人生の仕事として考えることはなかったのだと思います。

 年齢をいったん横に置いて、夫の「やりがいのある仕事」についての「具体的な相談役」になるのはどうでしょうか。

 まず夫に「やりたい仕事はあるのか?」を聞いて、なければ、「一緒に考えてみない?」と提案するのです。

 もう一つのアドバイスは、「仕事以外の生きがいをつくる」ということです。

 具体的には、「社会人劇団や地域劇団に参加する」というのはどうでしょうか。

 日本各地には、働きながら芝居を続けている人達がたくさんいます。プロを目指すのではなく、定職を持ちながら、1年に1回程度、公演する集団です。

 プロであろうがアマチュアであろうが、お客さんにとっては、同じ演劇です。

 話は少しそれるのですが、大切なことなので聞いて下さい。

 どんな業界でも、ジャンルそのものを豊かにするためには、頂点を押し上げる方向とすそ野を広げる二つの方向が必要になります。

 例えば、ピアノ業界が興隆するためには、世界的なピアニストが生まれるだけではなく、多くの人がピアノに親しむことが重要です。

 例えば「この音楽大学では、何人の有名なピアニストを生んだか」を一般の人は注目しますが、同時に、「どれだけ多くの人にピアノの楽しさを伝えるピアニストを生んだか」も大切なことなのです。

 だって、「ピアノは面白い」ということを、世界的に有名なピアニストのCDや演奏を聴いて知った人の数より、ひょっとしたら、街のピアノ教室の先生から知った人の方が多いんじゃないかと思うからです。

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