ウィリアム皇太子とキャサリン妃への悪意

 そんなニュースが流れる中、イギリスのチャールズ国王の悩みは日に日に深くなるようだ。ヘンリー王子は、結婚して2年後に王室を離脱し、メーガンさんの出身地であるアメリカに移った。その時、チャールズ国王は新生活に必要だろうといくらかの費用を持たせてやった。そのお金をもとに堅実な生活を送ることを期待したが、見事に裏切られているからだ。

ウィリアム皇太子とキャサリン妃は、英国君主の公式誕生日をお祝いする英王室の伝統行事「トゥルーピング・ザ・カラー」に出席。バッキンガム宮殿のバルコニーでジョージ王子、ルイ王子、キャサリン妃と一緒にを振った=2024 年 6 月 15 日(photo REX/アフロ)

 ヘンリー王子とメ―ガンさんは、オプラ・ウィンフリー氏のインタビューやネットフリックスのドキュメンタリー番組「ハリー&メーガン」、暴露本「スペア」などで、家族への批判を虚偽や誇張を含めて世界に向けて発信している。中でも、実兄であるウィリアム皇太子とキャサリン妃(42)には、特に悪意に満ちた物言いが目立った。

 そして、今年5月のナイジェリア訪問に続いて、今回のコロンビアでも、ロイヤルツアーもどきの“外遊”を繰り返している。メーガンさんは「外遊は王室にいるときに最も好きな公務だった」と話していたこともあった。

 イギリス国民からは、2人から「称号はく奪」、ヘンリー王子の「王位継承権(ルイ王子に次いで第5位)の取り上げ」、2人の子どもであるアーチー王子とリリベット王女の「称号はく奪」などを国王が断行すべきとの声が以前より噴出している。それをチャールズ国王は十分に承知している。称号はく奪に関しては、以前に署名活動まで起き、「国王は優柔不断」「いつまで好き勝手をさせるのだ」と、いら立ちの声さえ出ているのだ。

ヘンリー王子の帰りを信じるチャールズ国王

 しかし、デイリーエクスプレス(オンライン)によると、チャールズ国王はヘンリー王子と過ごした日々を懐かしみ、「ヘンリーは必ず王室に帰ってくる」と信じていて、「王室のドアはいつでも彼のために開いている」と繰り返しているという。

1995 年 8 月 19 日、記念式典に出席したチャールズ皇太子とダイアナ妃 、ウィリアム王子 、ヘンリー王子。この日から約30年が過ぎた(photo AFP/アフロ) *肩書は全て当時

 先日、チャールズ国王は宗教指導者に相談した。ヘンリ―王子とメーガンさんの結婚式や自分の戴冠式を執り行ったカンタベリー大司教だ。大司教は国王の話に静かに耳を傾け、国王である公人の立場と父親である私人の間で悩む国王を優しく慰め、瞑想するようアドバイスした。チャールズ国王は、「心に栄養をいただいた」と感謝したそうだ。

 一方、ウィリアム皇太子はヘンリー王子の裏切りに傷つき、「いつか来る自分の戴冠式に、弟は呼ばない」と断固たる姿勢を保つ。ヘンリー王子とメ―ガンさんの言動をきっかけに、チャールズ国王とウィリアム皇太子の間にも溝ができつつある。

 デイリーメール(オンライン)によると、ダイアナ元妃のすぐ上の姉の夫で故エリザベス女王の主席私設秘書ロバート・フェローズ男爵が7月に亡くなり、ノーフォーク州の教会で8月28日に葬儀が行われた。その場に、ヘンリー王子がひとりで姿を見せたという。当初、ヘンリー王子は「イギリスは危険なので欠席する」としていたが、メーガンさんから「王室とのかかわり合いを絶やさないで」との指示があったといわれる。だが、300人ほどの参列者の中でウィリアム皇太子とは離れて座り、2人は目も合わさず口も利かなかった。

ダイアナ元妃の実家に宿泊

 また、チャールズ国王はヘンリー王子にバッキンガム宮殿での宿泊を勧めたが、ヘンリー王子はダイアナ元妃の実家スペンサー家の邸宅オルソープに向かった。英王室のウインザー家と名門貴族スペンサー家は、ダイアナ元妃の死去以来、犬猿の仲だ。ヘンリー王子の選択に、チャールズ国王の悩みと哀しみはいっそう深まったのではないだろうか。

(ジャーナリスト 多賀幹子)

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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