たとえば、柿木蓮(2018年ドラフト5位・日ハム育成落ち)、香月一也 (2014年ドラフト5位・ロッテ→巨人→オリックス育成)、仲三河優太(2020年ドラフト7位・西武・育成落ち)、福田光輝(2019年ドラフト5位・ロッテ→日ハム2軍)、中田惟斗(2019年育成選手ドラフト3位・オリックス2軍)といった面々。要するに、現在の高校野球の練習は、成長時期の生徒にふさわしい筋肉トレーニングかどうかも考えず、新兵器の機器を使って鍛え、体調も考えずに試合に出場するため、二重に故障をかかえ、伸びしろがなくなっているのです。
今年のプロ野球で1年目から1軍に出場している主な選手は、松尾汐恩(大阪桐蔭・DeNA)、西舘勇陽(中央大・巨人)、佐々木俊輔(日立製作所・巨人)、泉口友汰(NTT西日本・巨人)。多くは、緊急補強的な社会人や大学生で、巨人軍の場合は特にその傾向が見られます。
一方、名門校出身で、上位指名でもまったく活躍できていない選手もいます。阪神1位の下村海翔(九州国際大付高・青山学院大学)は4月入団直後に肘の故障が発覚、トミージョン手術を受けています。中日1位の草加勝(創志学園高・亜細亜大)は1月に右肘損傷の診断。ヤクルト1位の西舘昂汰(筑陽学園高 ─ 専修大)も、1月に上半身故障でキャンプに参加できませんでした。他にも広島1位の常廣羽也斗(大分舞鶴高・青山学院大)、ソフトバンク1位の前田悠伍(大阪桐蔭高)など。彼らはまだ1軍に登場してもいません。
もはや野球の練習法は変わった
古いタイプの指導者が呆然とする理由
これからプロ野球の練習方法は変わるでしょう。大谷の育ての親である花巻東の佐々木洋監督が昨年12月、「甲子園塾」の講師を務めたことがあります。「甲子園塾」は日本高野連が主催する、野球部の部長や監督を対象にした若手指導者育成のための研修会。そこでの大谷翔平や菊池雄星の指導者としても知られる佐々木監督の講義は、従来とはまったく違うものでした。
「戦術や技術や指導者としての心構えを説くのかと思ったら、パソコンを何台も持ち込んで、映像を見せながら体のメカニズムを理解する重要性をレクチャー。筋肉を付ける以前に柔軟性が大切だとか、股関節の骨盤や胸郭など、選手個々の体に合った指導法が重要だいう講義でした。古いタイプの指導法に染まっていた高校の部長や監督は、ボー然としていたそうです」(スポーツ紙記者)
プロ野球も大物選手をコーチにするより、佐々木監督のようなアマチュアの最新理論を持ったコーチを、チームに入れる必要がありそうです。
(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)