「この程度の利上げでは、マンションの価格の動向にほとんど影響を与えないものと思われます。政策金利の引き上げに伴い、確かに固定型の住宅ローン金利は多少上昇するかもしれません。しかし、全体の7割以上に当たる人たちは固定型よりも低利の変動型を選択しているのが現状ですし、こちらの金利にはさほど大きな変化が生じないでしょう」(長嶋さん)
一方で、都心の億ション人気はあくまでバブルであり、早晩弾ける宿命にあるとの声が囁かれている。一般的な所得層の手が届かなくなったことで参加者が減り、次第に失速していく可能性は考えられないのか?
海外と比べれば割安
だが、ここまでの価格高騰を牽引してきたのはもっと資金力のある買い手で、彼らの意欲は全く失せていないと長嶋さんは説く。
「海外の主要都市と比べれば、東京のマンション価格は依然として割安な水準です。もしも東京がバブルと化しているのであれば、他国の状況はまったく説明がつきません。ロンドンや香港におけるハイエンドクラスのマンション価格は東京の2倍以上に達していますし、台北や上海などと比べても東京の価格水準は低くなっています」
東京都心の億ションを買い逃して大阪や福岡などに物色の矛先を転じる動きが見られることについて先述したが、グローバルな規模で捉えると、日本のハイエンドクラスマンションが“出遅れ株”となっているのだ。まだ割安な価格で手に入れられるうえ、治安のよさも格別であることから、海外からも買い手が積極的に参戦している。
少子高齢化が進んで人口が減り続けていく国のマンション価格が上昇し続けていくはずがないと唱える人もいる。だが、全体的にはシュリンク(縮小)しながらも、利便性が高くて住みやすいエリアには人が集中し、住宅に対する需要はむしろ拡大しうる。
バブル期の体験が尾を引いているのかもしれないが、全国的に不動産価格が高騰するような現象はレアケースにすぎない。真の需要の有無によって、価格の推移に少なからぬ格差が生じるのが本来の姿である。繰り返しになるが、バブル崩壊後の約30年間で日本における土地の時価総額はほぼ半減したものの、10年以上にわたって都心のマンション価格は上昇し続けているのだ。