麻布台ヒルズで最も高いビル「森JPタワー」に入る高級住宅「アマンレジデンス東京」
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 都心のマンションの高騰が止まらない。東京23区の平均価格は1億円を突破し、200億円とまで言われる物件も出始めた。一般の会社員世帯は手が出せない領域。この勢いはどこまで続くのか。

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 昨年11月下旬に開業した麻布台ヒルズ。六本木ヒルズの2倍を超す巨額の建設費が投じられ、そのメイン棟(森JPタワー)は大阪のあべのハルカスを抜いて日本一高いビルになった。さらにセンセーショナルな話題となったのは、54~64階の居住用マンションの販売価格だ。世界各国で高級リゾートホテルを展開する「アマン」が手がけた高級住宅「アマンレジデンス東京」(91戸)で、最上階にあるペントハウス3戸のうち2戸は、非公表だが200億円以上もの価格が設定されたと言われている。

 こうした世間ズレした超高額マンションは、麻布台ヒルズだけに限った話ではない。港区六本木のパークマンション檜町公園には55億円、港区三田の三田ガーデンヒルズには45億円という最高分譲価格が設定されたと噂されている。しかも、かつては数千万円台だった物件においても価格高騰傾向が顕著になっている。

 不動産経済研究所の調査によれば、東京23区における新築分譲マンションの販売価格(年間の平均価格)は昨年に前年比39%もの上昇を遂げ、1億1483万円に達した。しかも、これは昨年だけに限った現象ではなく、直近5年間の上昇幅も60%で、神奈川県(同11%)や埼玉県(同13%)と比べても突出している。

 実際、大手ディベロッパーが販売中の都心物件を確認したところ、いずれも軽く億を突破していた。たとえば、中央区月島のグランドシティタワー月島の販売価格は、1億4800万〜3億円だった。

都心3区、5区に人気集中

 いったい、マンション価格高騰の背景には何があるのか? まず指摘されているのは、建設資材や人件費の高騰によって工事にかかるコストが膨らんでいることだ。コロナ禍を抜け出してグローバルに経済活動が本格的に再開されたことは、多方面において需要と供給の関係にギャップをもたらした。その結果、エネルギー・資源価格をはじめとするインフレ(物価上昇)が深刻化し、空前の人手不足が人件費の上昇につながった。

 もっとも、目の前の価格高騰はコストの増大だけでは説明がつくものではない。東京23区における上昇が顕著であることにそのヒントがあり、不動産コンサルタントの長嶋修さんは次のように述べる。

「昔と違って今は共働き世帯が主流となっており、夫婦二人の収入を合わせた予算で、通勤に便利な利便性の高い物件を購入するケースが増えています。その結果、都心・駅近・駅前・大規模・タワーといった条件を満たす物件に人気が集中しているわけです」

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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