走り幅跳びで世界記録を持つマルクス・レームは、世界で最も有名なパラアスリートの一人だ。パリ・パラリンピックの開会式で聖火ランナーも務めた(写真:越智貴雄)
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 けがや病気で障害を負ったパラアスリートにとって、義足は相棒だ。大会ごとに進化する技術や技術者の熱意を、パリで取材中の記者が紹介する。AERA 2024年9月9日号より。

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「パラリンピックって、どこがおもしろいんですか?」

 パラスポーツを取材していると、こんな質問をたびたび受ける。よくある質問ほど答えるのは難しいもので、

「ボッチャは『陸上のカーリング』と呼ばれるほどルールが似ていて、わかりやすいですよ」

「車いすが激しくぶつかるバスケやラグビーはすごい迫力です」

 などと、とりあえずは言ってみるものの、「こんな説明で良かったのかな」と考え込んでしまう。

 そうこうしているうちに8月下旬にパリに着くと、街の中で「START YOUR IMPOSSIBLE」という言葉と出合った。これはトヨタ自動車が掲げるスローガンで、パリ・パラリンピックのキャンペーンにも使われている。意訳するなら「不可能を可能にする」といったところだろうか。

世界記録を超えるか

 たしかに、すべてのパラアスリートの歩みは「不可能への挑戦」である。国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドルー・パーソンズ会長も、記者会見でこう強調していた。

「パラスポーツを初めて見た人の反応は『人間はこんなことができるのか』という驚きだ。そして、実際に競技を見ると感情がわき起こってくる。その瞬間が、人の人生を変える」

 不可能に挑戦しているのはアスリートだけではない。パラスポーツでは、技術者の熱い想いで開発された道具の進化とともに、記録が飛躍的に伸びることがある。今では五輪選手の記録を超えるパラリンピアンも出てきた。

 5日未明(日本時間)に実施される陸上男子走り幅跳び決勝(義足・機能障害T64)には、マルクス・レーム(ドイツ)が登場する。彼が持つ世界記録は8m72。パリ五輪の陸上男子走り幅跳びで金を獲得したミルティアディス・テントグル(ギリシャ)の記録が8m48であることを考えると、レームのすごさがわかるだろう。

 レームが期待されているのは、もはやロンドン大会以来のパラ4連覇ではない。五輪の優勝記録を超えることでもない。目指すは、1991年8月の東京世界陸上でマイク・パウエル(米国)が記録して以来、33年間破られていない8m95の世界記録を超えることだ。

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耐久性と反発力を両立