古賀茂明氏
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 8月28日、日本原子力発電の敦賀原子力発電所2号機(福井県)について、原子力規制委員会は、原子炉建屋直下の断層が活断層である可能性が否定できないとして、再稼働の前提となる審査に不合格とする審査書案をとりまとめた。

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 わかりやすく言えば、再稼働を認めないということだ。このような判断は、規制委ができて以来初。今後、パブリックコメントの手続きを経て正式に不合格となる見込みだ。

 原電は審査を再申請する意向だが、規制委は、敷地内や周辺に100以上の断層があり、その再評価が前提だとしているので、再稼働が認められることはほぼないと見られ、廃炉に向かうしかなくなるだろう。

 この2号機を巡っては、原電による審査資料の約80カ所の無断書き換えや約1300カ所に及ぶ誤記が発覚し、審査が2回中断された。そもそも、そんな酷いことをする会社に原発を動かす資格などない。不正が見つかった時点で、審査を終了すべきだった。

 原電は、国内で唯一の原発専業企業だ。大手電力9社が出資してその資金で原発を建設し、電力を電力各社に販売して収益をあげてきた。

 しかし、保有していた原発4基のうち2基はすでに廃炉が決まり、福島の事故後停止したままの残り2基のうち1基が今回廃炉とほぼ決まった。

 残る1基、茨城県の東海第二原発も再稼働の見通しは立たず、廃炉に追い込まれる可能性さえある。

 現在、原電は、東京、関西、中部、北陸、東北の大手電力5社と電力販売契約を結んでいて、原発が稼働していないにもかかわらず、なぜか「基本料金」の支払いを受け続けている。この先716億円と見積もられた敦賀2号機の廃炉費用が発生すれば、これも電力会社に負担してもらう必要がある。

 電力会社が支払っている基本料金や将来の廃炉費用などは、電力料金に転嫁される。全部私たちがそのツケを負い続けるわけだ。

 これはどう考えても正当化できない。

 今すぐに、原電の原発すべてを廃炉にする決定をして、原電を清算すべきだろう。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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