タブー視になった「廃炉」という言葉
敦賀原発に限らず、日本中どこに活断層があってもおかしくないことは、大きな地震があるたびに思い知らされてきた。今年初めの能登半島地震でも活断層の怖さを多くの人が認識したばかりだ。
日本で活断層がない場所を言い当てることは、科学的に困難だといわれるが、敦賀のように危ないところで原発建設が認められたのはなぜかといえば、原発建設という結論ありきで、あとは電力会社が出してきた資料をもとに政府が無理して建設を認めてきたからにすぎない。
原電内部でも、これ以上無理して原発を動かすべきではないと考える人もいるはずだ。しかし、「廃炉」という言葉を発することは、原子力ムラではタブーになっている。
一度始めたら止められない。日本人の悪弊がここでも支配している。これまで、それを破る勇気がなかったために、どれだけ大きな失敗を繰り返してきたのか。
その教訓を思い出してほしい。
ここで世界に目を転じてみよう。今や、世界中で再生可能エネルギーのコストが原発を遥かに下回る状況になった。蓄電池の価格も劇的に下がり、太陽光や風力のような変動する再エネでもこれと組み合わせれば安定電源になるし、コストも十分に他の電源を下回る状況になった。脱原発は夢ではなく、具体的な計画さえ作れば実現できる次元の話になったのである。
実は、それは誰でも知っている世界の常識。それが常識になっていないのは、日本だけだ。
世界をリードする米GAFAMなどの巨大テック企業は、脱炭素を主要な経営目標に掲げており、今後巨大なAIデータセンターなどを建設する際に、この脱炭素目標と整合的な計画を作る。
例えば、米アップルは2030年までに、自社のみならず、取引先の温室効果ガス排出「スコープ3」(サプライチェーン、輸送、製品の使用、廃棄など、自社の管理外の発生源による事業運営に起因する温室効果ガス)までを含む供給網全体で、排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。
米グーグルも30年までにデータセンターやオフィスで使う電力をすべて再生可能エネルギーとする方針だが、データセンターの電力需要増でこの実現に黄信号が点っている。
米アマゾンも、25年までに100%再生可能エネルギーで自社事業を運営する予定だ。スコープ3の脱炭素目標は40年だが、サプライヤーなどには、すでに炭素排出量データの報告・排出量削減目標の設定を要求していると報じられている。
米マイクロソフトは、創業者ビル・ゲイツ氏が原発推進派であるため、脱炭素に原発を活用することに問題はないとすると思われるが、多くのテック企業は、新たなプロジェクトを計画する際に、再エネ電力の調達をセットで考える傾向がかなりはっきりしている。