派閥の解体もこれを加速した。岸田文雄首相が今年1月に宏池会(岸田派)の解散を宣言し、清和研(安倍派)、志帥会(二階派)、近未来政治研究会(森山派)が続き、茂木敏充幹事長が率いる平成研(茂木派)も政治団体の届け出を取り下げて「政策集団」になっている。

 こうして派閥による「制約」が解除される一方で、党内には特定の候補を持ち上げる力もなくなった。総裁選で勝利するためには過半数を獲得する必要があるが、候補乱立では1回目の投票での決着は極めて困難と見られている。しかも決選に残るには上位2位までに入らなければならないが、果たして誰が残れるのかはわからない。

 このように見通しが不透明な中で、“キングメーカー”も喘いでいる。自分が推す候補を勝たせるという時代ではなくなり、勝てる候補に乗っからなければならない。だから麻生氏は河野氏を応援しながら、派閥に縛りをかけなかったのかもしれない。

派閥の票を「ばらす」

 現在のところ、志公会では、甘利明前幹事長ら4人が小林鷹之・前経済安全保障担当相を支持しており、山東昭子前参院議長ら3人以上が上川氏を支持しているが、いずれも1回目の投票で勝ち残れるかどうかは微妙なところ。もっとも麻生氏が推す河野氏が確実に勝利する保障もないから、こうして派閥の票を「ばらして」いくつもりなのだろう。

 麻生氏が「敵」とするのは、麻生氏とキングメーカーの座を争う菅義偉前首相と、2009年に“麻生降ろし”の急先鋒を担ったと言われる石破茂元幹事長だ。次期総裁選を「最後の挑戦」とする石破氏と、菅氏が支持する小泉進次郎元環境相は、「次期総裁」の世論調査で常に上位を占める。しかし石破氏は党内基盤が薄く、15年や21年の総裁選では出馬を見送った。

 来年7月には参院選が予定され、10月までに衆院選が行われる。その顔を選ぶ次期総裁選は、なんといっても国民にアピールできる存在でなければならない。

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総裁選とは別の戦いとは