9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選では、最多の12人が出馬の意向を示し、これまでにない激戦・混戦が予想される。事実上、派閥の縛りがなくなり、各自の判断で候補を選ぶことができる。そんななか注目されるのは、いまだ派閥を継続している麻生派の会長、麻生太郎副総裁の言動だ。河野太郎デジタル担当相を支持する構えだが、派閥全体で一本化はしない。自らの影響力を残すための“保険”を他候補にかけているようにもみえる。キングメーカーにとっても難しい総裁選。政治ジャーナリストの安積明子氏に聞いた。
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「こういう大会を開いて、一致結束弁当みたいに縛り上げるつもりは全くありませんし、河野太郎もそれを期待してるわけでもありませんし、ぜひ皆さん、そういった気持ちをもって、志を同じくしているような人たちが、気持ちを是非、なるべく一致させてくれることが出来るのであれば、これに勝ったものはない、そう思っております」
8月27日に横浜で行われた志公会(麻生派)の研修会。党内唯一の派閥の領袖である麻生太郎副総裁はこのように、次期総裁選への出馬を宣言した河野太郎デジタル相を支援することを表明した。同時に派閥として縛りをかけず、他の候補を応援することも容認した。
上川氏を「その気」にさせたのは麻生氏
12人が立候補の意向を示している総裁選だが、出馬するには国会議員20人の推薦人が必要だ。衆参両院合わせて367人の“有資格者”がいる自民党でも、それを集めるのはなかなか難しい。
たとえば総裁選出馬に意欲を示す上川陽子外相は8月28日、「支持と推薦の間にこんなに大きなギャップがあるということを、改めて実感している」と本音を吐露している。その3日前の25日には、「20人というものを超える支持をいただいているところだ」と自信をのぞかせたばかりだった。
その上川氏を「その気」にさせたのは、麻生氏だった。麻生氏が今年1月に福岡県内で行われた講演で「俺たちから見てもこのおばさん、やるね」と持ち上げたため、上川氏は一躍、総裁候補に躍り出た。