「教師自らバリカン」でも口頭注意のみ

【中】でも、この前、大阪の私立高校のハンドボール部でありましたよね。指導者がバリカンで選手の頭を刈っている写真が新聞に載っていました。

【松】ありましたね。しかも、それが学校サイドからの口頭による厳重注意のみで片付けられてしまっていることに驚かされました。選手本人は納得していたとのことですが、納得せざるを得ない状況をつくっていた可能性は否定できません。

【中】昔は教師が無理やりバリカンで刈るなんてこと、普通にありました。頭の上に手を置いて、指の間から髪の毛がはみ出たら「俺が刈ってやる」みたいな。悪さをして、見せしめのように衆人環視の中で先生に刈られている生徒もいたくらいです。そういうことが微笑ましい光景のようにも見られていた記憶があります。同じノリなのでしょうね。

【松】でも、生徒の内面まではわからないじゃないですか。顔は笑っていても、恥ずかしくて仕方なかったかもしれない。ものすごい屈辱感に苛まれていたかもしれない。むしろ、それを悟られないように笑顔をつくっていたとも考えられます。

【中】そういうケースが蓄積してきて、こういった人権問題は少しずつ表面化してきたわけですもんね。

「ルールを承知の上で入部した」と判断されるかもしれない

【松】教師自ら刈ったわけではなくても職を追われた例もあるんです。

 2012年、山口県の私立高校のテニス部の顧問は丸刈りを強要したことなどが原因で解雇されています。教師は遅刻や忘れ物をした生徒に言葉で丸刈りを迫るだけでなく、美容院に連れて行き丸刈りにさせたこともあったそうです。

 教師は不当解雇だと訴えたのですが、丸刈りの強要以外にも問題行動や発言があったため、裁判所は学校側の「重大な権利侵害」という主張を認めています。ルールを破った生徒に対する指導者の対処方法には、訴えられたら違法に当たるのではないかなというケースはものすごくたくさんある気がします。

【中】野球部のように丸刈りが暗黙の了解になっている場合、それは明確にルールと言えるのでしょうか。

【松】そこは本当に難しいと思います。裁判所がどう判断するかでしょうね。先輩たちがみんな丸刈りにしているのを見て入ったのだから、承諾の上、入部したということになりますよねと見なす人もいるかもしれません。

【中】つまり、校則のように明文化されているわけではないけど、ルールとして捉えていましたよね、と。

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