義父(左)と握手する美良生くん(写真=奥山さん提供)

手紙を読んで変わった義父の態度

 そこにはこうつづったという。

<私たちにとって美良生はすごく大切な子どもです。私は毎日一緒にいるから、彼の良さも悪さも丸ごとわかっているけれど、お義父さんは年に数回しか会わないからわからないですよね……。でも、多くの時間を過ごせば、きっと気持ちも変わると思います>

 奥山さんは言う。

「お義父さんを否定するのではなく、わからないのは仕方がない、でも、私たちにとって美良生は大切なんですっていうことを率直に書きました」

 手紙を読んだ義父は、次に会ったときに態度がガラッと変わっていたという。

「お義父さんのほうから、美良生に握手を求めてきてくれたんです。そのとき、目でごめんねと言ってくれているようでした。この直後に亡くなってしまったのでギリギリ間に合って良かったと思いました」

 周囲の人にたくさんの愛を注がれ、育ってきた美良生くん。奥山さんは「起きた瞬間から楽しそうで、おはようからおやすみまで笑っている子」と話す。

「できないことはいろいろとありますけど、常にニコニコ笑っていて、生きていることを本当に楽しんでいます。よく寝て、よく食べ、よく笑いっていう、人間として非常に成熟している子どもだなと思います」

 ダウン症の子は、流産する可能性が高いとされる。奥山さんは、そんな境遇を乗り越え、この世に生を受けたからこそ、「生きることを存分に楽しんでいると感じる」と言う。

「ダウン症の子って生まれる確率は低いけれど、無事生まれて生きている人たちは幸福度が高いって調査結果を目にしたんです。その調査では、ダウン症の当事者の9割以上が幸せと回答していました。そのときすごく納得できて。美良生がまさにそれを裏付けているなって思ったんです」

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