立憲民主党「新代表」の責任は重大

 こうした姿勢を示す石破氏が新総裁になれば、少なからず国民は、誠実な政治が実現するのではないかと期待する可能性が高い。自民党は信用できなくても石破氏なら信用できるという人は多そうだ。

 最後に、ついに真打登場と大きな期待を背負うのが小泉進次郎元環境相だ。支持する議員は日に日に増えていると言われ、国民人気も石破氏に次ぐ。立候補すれば、石破氏と首位を争うと見られる。「自民党をぶっ壊す」というスローガンで総裁になった父、純一郎元首相のイメージとも重なり、自民党を変えるシンボルになる可能性は十分だ。

 ただし、よく知る議員の中には、実力がないという厳しい評価も多く、史上最長の15日間の選挙戦の間の論戦に耐えられなければ、一気に人気が萎むという事態もないとは言い切れない。

 また、小泉氏は、政治資金問題について、特に尖った提案をしていない。それよりも、憲法改正について、自民党結党の原点だとして、力を入れてその必要性を唱えている。

 だが、国民は「原点に返る」ことなど求めていない。むしろ、自民党の過去と断絶する変革を求める国民が、当初の熱狂が冷めた時に、どう反応するのかが心配だ。

 このように見てくると、どの候補も、結局は、自民党議員の多数の賛同を得なければならないので、政治資金改革を本気で進めることはできないだろうということがわかる。石破氏が勝利して改革の旗を振ったとしても、総選挙の顔としての役割を終えれば、おそらく党内の反対で改革は頓挫すると見る方が現実的だろう。

 ただし、小泉氏や石破氏が新総裁になれば、国民は一時的に、「自民党が変わる!」という夢を見ることになりそうだ。夢見心地のままで解散総選挙となれば、政権交代は起きずに自民党政治の継続ということになる。そうなれば、まさに、岸田首相は「自民党の救世主」になるわけだ。

 しかしそれは、自民党が変われないまま政権も代わらず、日本衰退が静かに継続するということだ。意味するところは、日本復活への道が断たれることである。

「岸田首相は自民党を救ったが、その結果、日本を滅ぼすことになった」と後世に語り継がれることになるのか。

 それを防ぐには結局のところ、自民の変革という第1の道を求めるのではなく、政権交代による日本の変革という第2の道を求めるしかないのだろう。

 その意味で、9月23日に選ばれる立憲民主党の新代表の責任は重大だ。

 立憲代表選挙について、マスコミはもっと本気で報道し、我々もこれを注視していかなければならない。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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