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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は公共の場と撮影について。

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 所用でレンタルスペースを探していたら、廃校になった小学校校舎が出てきた。市が管理している元小学校の教室を、ヨガ教室や読書会などで利用する市民に開放しているという。全国で廃校校舎が増えている今、なかなか良い取り組みだなぁと感心していたところ、注意書きに「AV撮影は禁止」と記されていてハッとした。わざわざ「AV撮影」と具体的に注意しているということは、その手のことが過去にあったのかもしれない。

 今月、埼玉県鴻巣市の閉校した小学校で、若い女性タレントらの浴衣・制服姿の大規模撮影会を行政が許可したことが話題になった。市側は抗議の声に「断る内容のイベントとはいえない」と回答したそうだ。「性的なイベントではない」という判断をしたのか、「性的なイベントであっても断る程度のものではない」という判断をしたのか、どちらにしても「問題ない」という姿勢である。反対の声の中には地元の女性からの、「子どもたちが通っていた想い出深い学校で性的なイベントを行ってほしくない」という切実な訴えもあった。それこそ「若い女を撮影したい」「撮影イベントで利益を出したい」という欲望よりも優先されるべき市民感情なのではないかと私は思う。

 また、少し前のことだが、東京都杉並区では、女児が実父に性虐待されるという設定のAVが、区が管理する小学校隣接の公園で撮影されたことが話題になった。「区の公有地でのAV撮影は禁止すべき」という陳情が区民からあがったが、杉並区はこの陳情を不採択とした。「AVであるということを理由に一律に撮影を不許可にはできない」というのが、不採択の主な理由のようだ。

 この国で幾度も繰り返される「公共とエロ問題」である。

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AVは「毒」のようなもの