ロングインタビューに応じる山本耕史さん(撮影/写真映像部・松永卓也、hair & make up/佐藤友勝 styiling/笠井時夢) 
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 役を演じないでその人になりきる――。俳優にとっての永遠の課題をさらりとこなしてしまう印象がある。彼の演技はどのように生まれるのだろう。

【写真】「夫として父としてたくましくありたい」と語る山本さん

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興味のある「かっこいい」ものをやっている

「どんな役でもギリギリまで何も用意しないでその場でパンッと決める」。

 彼のその言葉を鵜呑みにすることはできないが、確かに器用な人だ。ギターや歌、ものまね、けん玉、料理……となんでもござれ。趣味の筋トレが高じてパーソナルトレーナーの資格も取った。努力を努力と思わない人なのだろう。こうした勤勉さ、器用さが演技につながらないはずはない。

「なんでもできますよね」と水を向けると、「自分が興味のある『かっこいいな』と思うものを、やっているだけなんです」と笑った。

「自分がやったことないものを人がやっているのを見たときに『これ、できるかも』『これはできないな』と、なぜかわかるんですよ。できなさそうなものにはそもそも手を出しません。スキーやゴルフのように、どこかへ出向いて勉強しなければうまくならないこともあまりやらないですね。僕は家でできるものがいい。1人で修得していくタイプなんです」

タップのステップもまず家で研究

 役づくりも同じだという。

 昨年出演した音楽劇「浅草キッド」の深見千三郎役では、タップダンスが必要だった。稽古初日に見て「これを僕がやるの?」と青ざめた。ステップが早すぎて目で追えず何をしているか、理解できない。先生のステップを録画してもらい、家に持ち帰った。

「録画をゆっくり見直しては、『ここで蹴って次にいくのか』とひとつずつ理解していく。僕にとっては一人で分析するのが修得の1番の近道。それができるようになると次の壁が出てきますが、そこは先達に聞く。『ここまではできるようになったんですが、ここができない。なぜですか?』って。『多分、体重の位置がこっちだから』と、今度は足元ではないところを修正していただく。なにごとも最初は自分で研究する時間が必要なんです」

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夫として父としてたくましくありたい