2025年4月に開幕する大阪・関西万博の会場となる大阪湾の人工島・夢洲(大阪市此花区)では、万博会場の隣でカジノを含む統合型リゾート(IR)の工事が進んでいる。しかし、この工事をめぐり、日本国際博覧会協会(万博協会)の十倉雅和会長(経団連会長)らが、万博期間中は工事を中断するよう大阪府市に求めていた。工期の遅れはIR事業者の撤退にもつながりかねず、吉村洋文府知事も簡単には応じない構えのようだが、着地点は見つかるのか。
【イメージ図】まるで外国のカジノ? IRの完成予想図はこちら!
「万博協会側には開催期間中もIRの工事を進めることで理解が得られていると思っていた。それが突然、トップ同士の話し合いで中断という話が出てきて驚くばかり」
と大阪市幹部は渋い表情だ。
日本一、SNS映えする場所として
7月末に十倉会長と吉村知事が会談した際に工事中断の要望があったという。博覧会国際事務局(BIE)も同じように中断を求めている。
吉村知事も突然の申し入れに、
「万博の開催期間中、IRの工事が続くのはマスコミをはじめ皆さん、ご存知のはず。国からも認定を得ている」
と戸惑いを隠せない様子だ。
万博協会などは、工事で騒音や振動が起きたり、景観を損ねたりすることに懸念を示しているという。
海外パビリオンの撤退などでイメージダウンが続く万博だが、そのなかでも最大の目玉としているのが世界最大級の木造建築物とされる大屋根「リング」だ。高さ20mある屋根の上から360度を眺めることができ、北は六甲山系、西は淡路島などが見渡せるといい、
「日本一、SNS映えする場所とPRし、集客につなげる考えです」
と万博協会の幹部が話すほど、景観は万博の「売り」なのだ。
IRの予定地では現在、液状化対策の工事が進んでいる。高さ10mほどの重機が稼働している様子が、万博会場の場所からも見える。
当初、IRは2029年秋から冬にかけての開業が見込まれてきた。だが、国による区域整備計画の認定の遅れや地盤対策などもあり、今は2030年中の開業予定となっている。