お盆休みは実家に帰省する人も多いあろう。家族の在り方について考える機会でもある。家族は身近な存在だからこそ、悩みも深い。この機会に、鴻上尚史さんの人気連載「ほがらか人生相談」の中から、家族に関する悩み相談とそれに対する鴻上さんの答えを改めて紹介する(この記事は2019年10月1日に配信した内容の再掲です。年齢肩書等は当時のまま)。
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高校生だった息子に届いた彼女からの手紙を隠して捨てたことが数年後にばれ、息子が冷たくなったと吐露する62歳の母親。息子のためにしたことがなぜ毒親呼ばわりなのかと納得できない相談者に鴻上尚史が問う「どこまで子供の立場を尊重するか」とは。
【相談44】息子を思う親心が、毒親呼ばわりされなくちゃいけないのですか?(62歳 女性 みどり)
アニメグッズを捨てた母親を恨む男性の投稿を読んで、私と息子のことのようで心が波立ちました。Twitterなどでもみなさん、その親御さんのことを「毒親」だと非難ばかりしています。でも、息子のことを思ってした親が、そんなに悪者で毒親呼ばわりされなくちゃいけないんでしょうか。
私は息子が高校生のときに、ポストにあった息子の彼女からの手紙を、読んでしまったことがあります。その頃、息子はその子とつきあいだしてから、帰宅が遅くなり、その子とのデートのためにバイトをするようになり、あきらかに利用されて振り回されていました。交際に反対しても聞く耳をもってくれませんでした。
手紙には、その子から別れ話を切り出したことの撤回と、誕生日に◯◯に来てほしいと日時が書かれていました。私は、その頃落ち込んでいる様子だった息子を思いながら、その子は誕生日プレゼントが欲しいだけなんじゃないかと、猛烈に腹がたち、もちろん迷いはありましたが、心を鬼にして、その手紙を数日隠してから捨てました。
それから8年経って、社会人になった息子にそのことがばれました。同窓会でその子と会ったらしいのです。
「なんでそんな勝手なことしたんだよ」と言われて、つい「知らないわよ。でもあの子に利用されてただけだったじゃない。あのままじゃ大学だって落ちてたわよ」と言い返してしまいました。
私の買い物に車を出してくれるようなやさしい息子だったのに、それからは素っ気なくなり、一人暮らしを始めてしまいました。音信不通になったわけではないですが、あそこから息子との関係は変わってしまったと思います。