昭和天皇はミッキーマウスの時計がお気に入りで、厳粛な行事の場に着用しようとするのを側近が止めようと試行錯誤したという=昭和天皇記念館、永井貴子撮影

厳粛な行事の場にミッキー時計を…

 昭和天皇がミッキーマウスの時計を愛用していたことは有名な話だが、75年に訪米してディズニーランドを訪ねた際に贈られた「ミッキーマウス時計」を、ここで見ることができる。

 梶田さんは、こんなエピソードを明かす。

「ディズニーランドから贈られた時計を昭和天皇はずいぶんお気に召して、ミッキーマウスの時計をいくつかお持ちだったようで、厳粛な行事の場でもおつけになろうとする。それを側近の人々はなんとかお止めしようと、昭和天皇が気に入りそうな新しい技術が採用された、絵柄のないオーソドックスな国産の時計を贈りなおしたそうです」
 

若い世代にも「昭和」という時代と記念館の存在を知ってほしいと話す副館長の梶田明宏さん=昭和天皇記念館、永井貴子撮影

 ここでしか見られない貴重な品は、まだまだある。

 たとえば、昭和天皇が宮殿「菊の間」で執務をする際に用いていた「執務机」。昭和天皇は、菊の紋が入った硯箱や美しく装飾された文具類、眼鏡、水差しなどが整然と置かれたこの机で、内閣から上奏箱に納められて届いた書類をご覧になり、毛筆で署名や「認」「可」「覧」の印を押していたという。

 また、皇居・吹上御苑に設けた生物学御研究所の部屋を再現したコーナーもある。

 昭和天皇は海洋生物や植物の分類学者としても知られ、「分類学の父」と言われるカール・リンネの名前を冠したロンドン・リンネ協会の名誉会員であり、ロンドン王立協会の会員でもあった。実際に使用していた書架や机、顕微鏡などから、研究者としての昭和天皇を感じることができる。

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