こやま:本当に天才的な人だったんですね。納品能力がないだけで。
山田:そんな致命的な欠点すら、今の感覚からすると、むしろアーティストっぽく思えてくるのが、ダ・ヴィンチのおいしいところ。「ラファエロなんてただの職人じゃん」みたいな感じになるわけですよ。
こやま:ミケランジェロなんていっぱい描いてるだけで。
山田:「偉そうなこと言ってるけど結局はローマ教皇の飼い犬じゃん」みたいな。
こやま:「レオナルドはゆうこときかねーぞー」みたいな。
山田:その自由さにシビれる、憧れる~。
こやま:オダギリジョーみたいな芸風でしょ。
山田:「無理してまでゴールデンタイムのドラマに出たくないっす」
こやま:最近はやりすぎると干されますけどね。
●オレ、また聖母子描かせられてるんすけど
山田:ダ・ヴィンチもある意味、干されてたのかもしれないけど。
でも、そこもまたアーティストな芸風の強いところで、「バチカンに描いてないんだって?」と突っ込まれても、「あんなとこに雇われたら好きな作品が描けなくなるから」で論破できちゃう。無敵の困った人という意味では、いちばんのヘンタイはダ・ヴィンチといえるかもしれませんね。
こやま:そうですかね。ミケランジェロより?
山田:ミケランジェロは、なんだかんだ言ってちゃんと納品してるし。
こやま:仕事はしてるわけですもんね。
山田:もうバカみたいに、ものすごく仕事しているわけですよ、ミケランジェロは。彫刻だって楽々彫っちゃう超人ですから。でも、ダ・ヴィンチ的なアーティスト目線で見ると、「あいつ筋肉好きで彫刻のほうが才能あるのに、首が曲がらなくなるまで天井画を描かせられてかわいそう」みたいな評価になっちゃう。工房経営で成功したラファエロも、「あのおじさん自由だなー」って感じでダ・ヴィンチのアーティスト性に憧れてたんじゃないでしょうか。
こやま:自分ができないことばかりですもんね。
山田:「オレ、また聖母子描かせられてるんすけど。たまにはダ・ヴィンチさんみたいに新しいことにチャレンジしてみたいっすよ」って思ってたかも。?