「ヘンタイ美術館」とは、美術評論家・山田五郎さんを館長、ズブの西洋美術シロウト・コピーライターこやま淳子さんを学芸員見習いに見立てた架空の美術館。美術に興味はあるけれどどこから入っていいのかわからない、という方々に向けた、西洋美術の超入門・連載です。こちらの連載では、書籍『ヘンタイ美術館』から内容をピックアップしてお届けします。今回は、「ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ 誰が一番ヘンタイか?」についてです。
●結論。いちばんのヘンタイは誰だ!?
山田:そんなわけで、発注する側としてはダ・ヴィンチは信用できない。故郷フィレンツェや当時の画家の聖地バチカンでは雇い主が見つからず、ミラノ公に自分を売り込んでやっと職を得た。それも画家としてではなく軍事技術者として売り込んだ結果なんですよ。自己推薦文の最後に「絵も描きます」みたいな一言が添えてあったとか。
こやま:「なんでもやります」的な(笑)。
山田:実際、ミラノ公に頼まれた仕事は城壁のデザインとか武器の考案とか、そんなのばっかりなんですよ。
こやま:できたんですか?
山田:いや、例によってほとんど実現していません。巨大な騎馬像の彫刻も注文されてるんだけど、それも原型の粘土像までで終わってます。
こやま:それもやりきれなかったんですね……。
山田:ただ、メモやスケッチはちゃんと残ってるんですよ。
こやま:スケッチが残っててもねえ……、ちゃんとやれよって感じですよね。多少はできたわけですから。
山田:その多少できたなかに『最後の晩餐』というヒット作が一発あったから、あとはやればできる子で引っ張れたのかも。
こやま:すごい自由な人ですね……。