学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)
この記事の写真をすべて見る

 小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は、英語嫌いの息子を持つ40代女性からの相談に答えてくれた。

【写真】廣津留さんの別カットはこちら!

* * *

Q. 高校生の息子が英語アレルギーです。本人に英語の何が苦手なのかを聞いたところ、文法が理解できないとのこと。強豪野球部に所属しているために、塾へ行く時間はほとんどありません。「英語が苦手だと、これから長い人生、損をするよ」と母親の私が言っても聞く耳を持ちません。英語嫌いの息子の心に響くアドバイスをお願いします。(40代/女性/会社員)

A. 個人的には、英語の勉強は文法から入らないほうがいいと思うんですよね。正直、私も文法はよくわからなかったな(苦笑)。「不定冠詞」や「三単現」といった日本語の用語自体がまず難しいですよね。文法の問題集を解くよりも、教科書に出てくる例文を暗記するなど、英語の文章構成に慣れることに時間を使ったほうが断然力がつくように思います。暗記がすぐにできなくても、ひたすら声に出して読んでいれば自然に覚えちゃうんです。例えば1日に教科書4ページ分を音読するとかなら、筆記用具もいらないですよね。部活で試合の遠征に向かうバスの中でもできるし、やってみようかなという気になるかもしれない。テストで毎回100点を取るとか、完璧を目指しているわけではないのであれば、文法のルールを覚えるよりも、英語の文章がどういう構成で成り立っているのかを感覚的につかむことのほうが大事だと思いますね。耳から英文に慣れるほうが早くて効率もいいと思います。

 「英語嫌い」とありますが、おそらく息子さんは英語を科目としてとらえていて、勉強することの本当の意味にまだ気づいていないだけなんじゃないでしょうか。英語は科目ではなくて言葉。できるようになると、やっぱり世界が広くなるし、近くなります。これは私自身も感じていることです。旅先ではもちろん役に立ちますし、どこにいてもさまざまな人とコミュニケーションできてつながれるというのは、生きていくうえでかなり大きなアドバンテージです。スポーツの実況や相手選手の言葉がわかるようになると思えば、モチベーションになると思います。

 それに、英語ができると世界中の情報源に原語であたることもできます。世界のニュースについて知ろうとするときに、日本語の情報だけではタイムラグが生じますし、翻訳されても細かいニュアンスが抜け落ちてしまっていることが結構あります。英語を使って複数の一次情報にリーチできると、得られる情報量が格段に増えます。どれだけの情報を得られるかが、人生を左右することだってありますよね。これからの情報化社会を生きるうえで、英語で人と差ができてしまうんだったら今のうちに埋めておいたほうがおトクじゃない?と、息子さんにぜひ伝えてみてください。

著者プロフィールを見る
廣津留すみれ

廣津留すみれ

ひろつる・すみれ/バイオリニスト、国際教養大学特任准教授・成蹊大学客員准教授。1993年、大分市生まれ。2016年にハーバード大学(学士課程)、2018年にジュリアード音楽院(修士課程)を卒業。世界的チェリスト、ヨーヨー・マとの共演のほか、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズの演奏・録音などを担当。情報番組にコメンテーターとして出演も。著書に『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超・独学術」』(KADOKAWA)など。2022年にファーストCD「メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲+シャコンヌ」をリリース。ジュリアード音楽院の教授ジョセフ・リン氏の代演を務めたコンサートのライブ音源を収録している。

廣津留すみれの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
シンプルでおしゃれな男女兼用日傘で熱中症を防ごう!軽さ&大きさ、どちらを重視する?
次のページ
AI時代に外国語を学ぶ意味