井戸まさえさん(いど・まさえ)/1965年宮城県生まれ。元衆議院議員。2005年から兵庫県議会議員を2期務める。東京女子大学・関西学院大学非常勤講師。著書に『無戸籍の日本人』など(写真:本人提供)

 ただ、政治は経験の仕事です。また、単に選挙に勝つだけではなく、二元代表制のもう一方である県議会をまとめていく力も必要になります。そうしたリーダーとしての度量があるかもわからないまま選出されたことが今回の問題につながっていると思います。

 また、今の兵庫県議会では、知事のパワハラを是正するシステムができていなかったと見ています。議会には維新の議員が21人いて、自民党の36人に次ぐ多さです。その多くは当選1回目で、知事や副知事に進言できる人はいなかったのではないでしょうか。

 こうした予想外の選出は他の自治体でも起きています。都知事選で注目を集めた前安芸高田市長の石丸伸二さんは、インタビューや市長時代の発言をめぐり、「パワハラ気質」が指摘されています。安芸高田市では、「河井事件」で前市長が辞職に追い込まれ、それまで東京で会社員として働いていた石丸さんが市長に就任したという経緯がありました。斎藤さんと同じく、下から積み重ねていく形での出馬ではなかったことが共通しています。

 自民党のさまざまな問題が明らかになり、政治家になることを諦めていた候補者が挑戦しやすくなっています。それ自体は悪いことではありませんが、実績のない候補者を判断する難しさもあります。長く活動するほどボロが出てしまうため、意図的に選挙直前に立候補表明をし、短期間でバズる戦略を取る人も増えています。知名度があれば相対的に票が入り、選挙を利用して知名度を上げることもできる。そうして当選した、政治家としては未熟な首長により行政が混乱することは容易に想像できます。都道府県知事だけではなく、国政選挙でも起こり得ることです。

 だからこそ、市民側も自分たちが住んでいる自治体のトップが誰で、何をしてきた人なのかをチェックすることが大切です。実績を評価するのはもちろん、新人候補であっても、SNSでその動向は確認できる。仮に発信が少ない人は、「発信が少なすぎる」ということ自体も判断材料になります。

(構成/編集部・福井しほ)

AERA 2024年8月5日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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