職員へのパワハラ疑惑が報じられた兵庫県の斎藤元彦知事。「この騒動は起こるべくして起こった」と考える元衆議院議員で兵庫県議会議員を2期務めた井戸まさえ氏に話を聞いた。AERA 2024年8月5日号より。
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兵庫県の斎藤元彦知事の「パワハラ」「おねだり」疑惑が連日報じられています。県議会は調査特別委員会を設置し、職員への尋問をするとしています。一連の問題を見ていて思うのは、この騒動は起こるべくして起こったということと、兵庫県以外の場所でも起こり得ることだということです。
斎藤さんが知事に就任したのは、2021年8月。それまで兵庫県では、5期20年にわたって井戸敏三前知事による県政が続いていました。井戸前知事は兵庫県の副知事も務め、県に長く関わってきた政治家の一人でした。
兵庫県に限らず、長期政権下では、今の状態を続けることが「安泰」につながると考える人が増えていきます。井戸前知事も退任後を考え後継者を育成していたようですが、バトンタッチの期間が想定よりも延びたことで、引き継ぎは遅れます。長期政権への不満を持つ人もいたと思いますが、それでも井戸県政の流れを継ぐ人が新たな知事になると多くの人が思っていました。
ところが、予想外の候補者が現れます。それが当時総務省から大阪府に出向していた斎藤さんでした。
斎藤さんは兵庫県出身ではありますが、県知事選が始まったとき、斎藤さんのことを知っていた県民はほとんどいなかったと思います。本来であれば厳しい戦いが強いられるはずですが、関西で勢いのある日本維新の会が斎藤さんを支援し、追い風が吹きます。
実績のない候補者を 判断する難しさ
さらに維新だけでなく、県出身の西村康稔さんや丸川珠代さんが応援に駆けつけ、自民党の一部が支援する動きもありました。このとき、長く続いた井戸県政を一新してほしいという思いに加え、「自民党が応援するなら大丈夫なんじゃないか」という安心感が生まれ、「何かやってくれそう」な斎藤さんへの支持が高まっていきました。