一般社団法人加藤永江教育研究所の入っていた都内のビル。事務所はなくなり、電話もつながらない(写真:宮本さおり)
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 各国の渡航制限が解かれ、留学を目指す若者が増えている。だが、斡旋をめぐる金銭トラブルも後を絶たない。被害は中高生にも及び、中には大がかりな手口も。AERA 2024年7月29日号より。

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 ニュージーランドへの留学を目指していたという地方在住の少女の家族は、留学斡旋(あっせん)を依頼していた法人を相手に詐欺罪での告訴を決めた。留学費用やサポート費用、英語力強化と称したオンライン授業の受講料など合わせて2千万円以上を支払ったが、留学はできず、払い込んだお金も返ってきていない。

「オフィスのあったビルは都会の一等地、スタッフも2、3人いたので、すっかり安心してしまいました」

 こう話すのは、少女の母親(54)だ。少女は人とのコミュニケーションが苦手なタイプ。友人はいるものの、中学に入ると学力面でも不安を抱えるようになっていた。

 母親が一緒にテストを見直すと、どうやら問題文をきちんと読めていないようだった。学校の担任からは「怠けている」と言われ、塾に行かせても、講師から「シャーペンの芯の無駄」「お金がもったいない」などと言われて途方にくれ、発達障害を疑った。そんな時、ネット検索でヒットしたのが発達障害の子がニュージーランドに留学し生き生きと暮らす姿が書かれたウェブサイトだった。英語好きだった娘が「行ってみたい」と言い出したため、高校からの留学を目指してリサーチを始めた。

渡航制限が解かれても

 見つけたのは一般社団法人加藤永江教育研究所。心療内科医を名乗る女性が代表理事を務めていた。問い合わせフォームから連絡すると、すぐに面談にこないかと言われ、親子は飛行機で上京した。事務所で検査を受け、発達障害と診断され、早めの留学を勧められた。留学は高校からと考えていると伝えると「このままだとろくな社会人になれない、娘さんの場合、専門家の下で早く治療を始めたほうがいいから」と言われた。親子は「医者がそう言うなら」と翌年2月からの留学を目指して準備を進めることに。現地校の席を確保するための費用や年間授業料、滞在費などを研究所の口座に振り込むように言われ、この時点で支払いは約280万円。その後、留学前に、海外生活のお試しにとイギリスでのサマーキャンプへの参加も促された。

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