運転手「あべこべよ。原田が『船木〜〜〜〜〜っ!!!(泣)』」

ぼんぼり「………え? 『ふなきがはらだ』じゃないんですか?」

運転手「『ふなきがはらだ』じゃないよ。『はらだがふなき』だよ。ねぇ、師匠?」

 急に振ってきたが、おっしゃる通りである。

一之輔「運転手さんの言う通り『はらだがふなき』だよ。覚えておいた方がいい。長野出身なんだから!」

ぼんぼり「失礼しました。はらだがふなき。はい! ちゃんと覚えました」

一之輔「……でね。岩崎は『今まで生きてたなかで一番幸せです』で、有森が『自分で自分を褒めたい』だからね。『最高でも金、最低でも金』が田村で、『ママでも金』が旧姓田村の谷。『ちょー気持ちいー!』が北島。『なんも言えねー』も北島。『前へ』はお爺さん監督の明大の北島。『ボールが止まって見えた』は川上で、『ベンチがアホやから野球がでけへん』は江本。『みなさん、そう興奮しないでください。落ち着いていきましょう』が江川。『しかたない、また引っ越すか』がたぶん大谷翔平だ」

ぼんぼり「はぁ……」

運転手「しかしまぁ、大谷も気の毒ですよね。マスコミに家バラされて!」

一之輔「ホントですよねー。あの家、空くんなら住まわしてもらいたいものですな」

運転手「ホントですな」

一之輔「いいか? 会話というものはこうやって続けていくんだ!」

ぼんぼり「なるほど! 勉強になります!」

 ……というぐあいに多少の時間軸のズレはあり、かなり盛ってもあるものの、オリンピックをキッカケにまるで五つの輪っかが絡まるように、車内は盛り上がったのでした。

 最後に運転手さん曰く「やっぱり、あのころはよかった」だそうです。

 もうすぐパリ五輪。がんばれニッポン。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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