十八「だいたい師匠方はみなさん同じようなことを聞かれますね……」
十八がボソリと呟いた。気の利いたことが聞けなくてスマン。噺家なのに判で押したようなことしか聞けずにスマン。
十八「今日の師匠の独演会に私の父と姉が来ます」
一之輔「おー、そうなのか。姉ちゃんなにやってんの? 村のヤンママとかか?」
十八「違います。村じゃないですし」
一之輔「(気にせず)で、村でなにやってんの?」
十八「弁護士です」
一之輔「は?」
十八「弁護士です。父の事務所で働いてます」
一之輔「父は?」
十八「父も弁護士です」
一之輔「父、姉ともに弁護士!?」
十八「はい」
一之輔「君は……落語家? 村で?」
十八「はい。『東京で』ですけど」
一之輔「すごいなー、弁護士かー。もしなにかで訴えられたら、俺も弁護頼もうかな!」
十八「ホントにみなさん同じことおっしゃいますよね。昨日も〇〇師匠に言われました」
べつにいーだろ! 同じこと言ったって! それが会話のキャッチボールってものだ。キャッチボールでいきなり変化球投げてもしかたなかろうが! 胸の正面の捕りやすいところにボールを投げるのがキャッチボールの基本じゃないですかね!
たとえば……「一番初めの記憶にあるオリンピックっていつ?」なんて問いは会話のキッカケとして基本中の基本だ。
(とってつけたような急な『オリンピック』ですいません)
ちなみに私は1984年のロサンゼルス五輪が最初のオリンピック。山下、森末、イーグルサム、カール・ルイスにアンデルセン、ソ連・東欧ボイコット。よっておいで〜、見ておいで〜♪ 商業五輪のはじまり、はじまり〜♪
会話が盛り上がるかどうかはともかく、なんとなくそれで時間はもつだろう。
「ずーっと地下牢で鉄仮面を被せられて育ったもので、こないだの東京五輪が初めてのオリンピックです」なんて人も、その鉄仮面生活を元に話が膨らむってものだ。