坂本誠さん(さかもと・まこと):公益財団法人地方自治総合研究所常任研究員。博士(農学)。過疎対策・中山間地域対策など地方自治に関する研究を行う(写真:本人提供)
この記事の写真をすべて見る

 地方創生を推進するための計画をまとめた総合戦略。自治体ごとに実態が違うのだから、その中身はそれぞれ異なるはずなのに、似たり寄ったりだという。一体なぜなのか。地方自治総合研究所・坂本誠さんに聞いた。AERA 2024年7月22日号より。

【写真】人口5000の町を活性化させたと注目の町長はこちら

*  *  *

 お住まいの自治体が、どのような総合戦略を作っているかご存じですか。今から10年前、地方創生の推進のため、すべての自治体が総合戦略を作りました。各自治体に策定費用に1千万円もの予算が配分されました。そこまでして作られた総合戦略ですが、皆さんに忘れ去られているのが現状です。

 自分たちで将来を考えて作った、主体的な計画でなかったからだと思います。私たちの調査では、4分の3以上の自治体がコンサルタントに策定を委託していました。国の総合戦略の構成をひっぱってきて、多少の味付けをして、既存の事業を割り付け直して仕上げただけの総合戦略も少なくありませんでした。その結果、複数の自治体の総合戦略を見比べると、とても似通っています。現在は、総合戦略第3弾の作成が進んでいますが、どんな戦略になっているでしょうか。

 ただ、なかには主体的に総合戦略の策定に取り組んだ自治体もありました。島根県海士(あま)町は、町の将来を担う若手を中心に総合戦略を策定しました。若手は何度も集まって、夜遅くまで町の将来を語り合いました。専門家の支援は受けましたが、戦略の中身は若手で考え抜きました。自分たちで新しい計画を作ろうというイニシアチブを持ったことが、他の自治体との違いです。コンサルや外部の専門家に頼むことが悪いわけではありませんが、頼む側に主体性が必要です。

 主体性を欠いた似たり寄ったりの計画が多くなる背景には、制度上の問題もあります。

 総合戦略に限らず、自治体が作らなければならない「計画」はとても多く、福祉分野だけでも、地域福祉計画、介護保険事業計画、障害福祉計画、自殺対策計画、子ども・子育て支援事業計画など数えきれないほど。それぞれの省庁がたくさんの計画を求めるため、受ける自治体に負担が集中します。職員が全て作っていては間に合わないので、コンサルに依頼することが多くなります。省庁が求める計画は体裁や項目があらかじめ決まっており、どの自治体の計画も似たものになります。

 省庁が「仕事をやっている感」を出すアリバイ作りのために、自治体に計画を作らせています。その傾向は改めなければなりません。

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年7月22日号

暮らしとモノ班 for promotion
香りとおしゃれ感を部屋にもたらす!Amazonでみんなが「欲しいアロマディフューザー」ランキング