アメリカが揺れている――。11月の大統領選挙をめぐるジョー・バイデン大統領への撤退要求、ドナルド・トランプ前大統領の議会襲撃事件に対する連邦最高裁による刑事責任の免責、そしてトランプ氏への銃撃事件……。「もしトラ」が現実味を帯び、共和党支持者が勢いづく一方、民主党支持者からはあきらめともとれる声も出ているようだ。混迷を極めるアメリカを、ニューヨーク在住40年超の現地ジャーナリストが報告する。
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本稿を入稿する直前に、いきなり飛び込んできたトランプ氏の銃撃事件。もともと何かと不測の事態が続いて混乱していた今回の大統領選だが、ついに暗殺未遂事件まで勃発。分断の進むアメリカに、さらなる混乱をもたらしている。
幸いトランプ氏は軽傷ですみ、射殺された容疑者は20歳のトーマス・クルックスという若者であることが判明した。共和党に登録していた履歴があり、政治思想犯である可能性は薄そうだが、この事件が選挙に大きな影響を与えることになるのは間違いないだろう。
今すぐの大統領選ならトランプ氏の当選確実という調査結果も
6月27日に行われた、ジョー・バイデン大統領とトランプ氏の討論会から、大統領選に向けた本格的な戦いが始まった。この直後、知人のレイチェルさん(60代)がSNSに「カナダか、ポルトガルか?」と書き込んだ。
民主党支持者である医学博士のレイチェルさんはこの討論会の後、トランプ氏が再選される危惧が現実的なものであることを実感したといい、トランプ氏が再選された場合に備えてアメリカ脱出を本気で考え、書き込んだという。
バイデン大統領の討論は、支持者でもかばいきれないほど覇気に乏しいものだった。もともと81歳という高齢が懸念されていたなかで、声がかすれ、言葉に言いよどむバイデン大統領の演説は、老いを感じさせた。
バイデン大統領への支持率はこの討論会後に急激に落ち込み、今すぐ大統領選が行われたならトランプ氏の当選確実という世論調査の結果が出ている。民主党の政治家たちの間からも、バイデン大統領への撤退を求める声が高まった。そこで起きたトランプ氏銃撃事件だった。