かつては保守、リベラルが5対4のバランスを保っていた最高裁だが、現在は9人いる判事のうち保守派が6人を占め、しかもそのうちの3人はトランプ氏本人が指名したという異常な事態にある。

 トランプ氏はこれまで何度も、再選されたあかつきにはバイデン大統領を含む政敵へ“報復”することを公言している。その人物に最高裁がゴーサインを与え、再び選ばれようとしているというのは、40年以上この国に住んでいる筆者から見ても異常としか言いようがない。アメリカの民主主義が危機に瀕しているというのは、決して大げさな表現ではないのである。

 今回の銃撃事件で共和党や民主党の多くの政治家たちが「暴力による解決は間違っている」と声をあげた。だがその一方でトランプ氏自身が煽った2021年1月6日の議会襲撃事件に関しては、免責決議が出されたことの皮肉。またこれまで何度も銃所持規制に立ちはだかってきた共和党だが、その大統領候補が銃で襲撃されたことを、どう感じているのだろうか。

かつての大統領選はどこに

 日々、公共の場で人の名前の言い間違えを揶揄され、撤退を求める声が大きくなりつつあるバイデン大統領。一方、在任中、コロナ治療に「消毒剤を注射できないだろうか」と無責任な発言をするなど、倫理観や道徳観の“欠如”を指摘されてきたトランプ氏。討論会では、お互いへの非難に終始したこの2人から大統領を決めなくてはならないのだろうか。

 前出のレイチェル氏は、2012年の大統領選で民主党と共和党の代表として戦ったバラク・オバマ氏とミット・ロムニー氏の討論会を例にあげ、こう語った。

「政策に関しては激しく討論しながらも、ロムニー氏がオバマ大統領に、結婚記念日を自分と一緒に過ごさなくてはならないことを詫び、祝福するという微笑ましいものでした。ああいう文化的な大統領選は、どこへいってしまったのか……」

 日本への影響も計り知れなく大きいアメリカの大統領選まで、あと4カ月をきった。今後どのような展開になるのか、目が離せない。

バイデン米大統領がX(旧ツイッター)に投稿した岸田文雄首相とのツーショット写真=バイデン氏のXから

(現地ジャーナリスト・田村明子)