今に始まったことではないが、アメリカの大統領選は「人気投票」とも言われる。今回、銃撃で耳から血を流しながらも気丈に拳を振り上げてみせたトランプ氏の姿は、おそらくアメリカ人の好む“強い大統領”としての印象を与えたことだろう。高齢を揶揄されているバイデン大統領と、ますます支持率の差がつきそうだ。

 では、民主党は別の候補者を立てる方がいいのかというと、そう簡単な話でもない。現時点でバイデン大統領が撤退するもっとも自然な流れは、彼がこれまで集めた政治資金を引き継げる、カマラ・ハリス副大統領が候補者となることだが、ハリス副大統領の人気はそれほど高くない。

 カリフォルニア州司法長官、上院議員として実績を築いたハリス氏だが、副大統領になってからの彼女の存在感は薄かった。なかでもメキシコとの国境を越えて入って来る移民対策の責任者でありながら、即効性のある対応をできなかったことは大きなダメージとなった。米国内は現在、中南米などから来た移民たちのコントロールがつかなくなり、ニューヨークでもシェルターが移民であふれている。周辺の治安が悪化し、市長が連邦政府に緊急援助を要請するなど、身近なところで影響が感じられている。

「俺なら五番街のど真ん中で人を撃っても支持者を失わない」

 中米からの移民で、ニューヨークで20年以上暮らすアンドレさん(40代/IT関係)は、

「カマラ・ハリス副大統領は尊敬するが、彼女では一般投票でトランプに勝ち目がないでしょう。バイデンは撤退すべきではない」

 と話した。

 今回、民主党支持者が前回にもまして懸念しているのは、連邦最高裁がトランプ氏の2021年1月6日議会襲撃事件に対する刑事責任を免責する、という決議を出したことだ。連邦最高裁が大統領経験者を刑事責任から免責すると示したのは、米国史上初のこと。

 トランプ氏は以前、「俺なら五番街のど真ん中で人を撃っても支持者を失わない」と豪語したが、虚言の多い彼の言葉の中で、図らずもこれだけは“真実”に近いともいえる。

2024年7月15日、共和党全国大会の会場でトランプ氏を支持するサインを掲げる参加者たち=ウィスコンシン州ミルウォーキー
暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
銃所持規制に立ちはだかってきた共和党だが……