王位戦挑戦者決定戦で勝ち、挑戦を決めた渡辺明九段=2024年5月30日、東京都渋谷区
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2024年7月22日号より。

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 将棋界の歳時記では、王位戦七番勝負は盛夏の中でおこなわれる。そして今年も、熱戦の幕はあがった。

 藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お〜いお茶杯第65期王位戦七番勝負第1局は7月6・7日におこなわれ、7日午後に80手で千日手(引き分け)が成立。指し直し局は同日夜、136手で藤井王位が勝利をあげた。

 渡辺は若干不利な後手で千日手に持ち込み、指し直し局では終始優位に立っていた。そして最終盤、長手数で難解ながらも藤井玉には詰みが生じた。しかし時間切迫の中、渡辺はその詰みを発見することができなかった。

「最後詰みがあるなら、詰まさなきゃいけなかったですね」(渡辺)

 最後はからくも、藤井の逆転勝ちとなった。

「結果は幸いしましたけど、内容としては反省するところが多かったと思うので。まずはしっかり振り返って、また集中して第2局に臨みたいと思います」(藤井)

 藤井は2020年、18歳のときに初めて王位を獲得。以来現在まで4連覇中だ。今シリーズを制すると早くも「連続5期」の条件をクリアして「永世王位」の資格を得る。先日は棋聖5連覇で「永世棋聖」の資格を獲得。21歳の若さで永世称号保持の史上最年少記録を更新したばかりだ。7月19日の誕生日で22歳を迎えるこの夏、早くも「永世二冠」達成となるのだろうか。

 大棋士の道を歩んできた渡辺は40歳。現在までに永世竜王、永世棋王の資格を保持している。自身初となる王位を獲得すれば、同時に藤井の「永世二冠」も阻止できる。過去5回の両者によるタイトル戦は、いずれも藤井が制してきた。渡辺としては本局を落としたのは痛恨だっただろう。しかしまだ、熱い夏は始まったばかり。第2局は7月17・18日におこなわれる。(ライター・松本博文)

AERA 2024年7月22日号

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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