【シンクスコーポレーション】マイスター 山口 勝(やまぐち・まさる)/1983年生まれ、神奈川県出身。飲食店・宿泊業関連会社を経て2008年に入社。10年間アルミ切断課で勤務、18年に退職するも、19年1月にシンクスコーポレーションに再入社(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年7月22日号にはシンクスコーポレーション マイスター 山口勝さんが登場した。

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 軽くてさびにくい特徴などからさまざまな製品に広く使われるアルミ。柔らかく加工しやすい半面、非常に傷つきやすい素材でもあり、加工技術には細部にわたる精度が求められる。

 アルミ板の切断加工に10年以上従事している。最大で幅1メートル52センチ5ミリ、長さ3メートル5センチのアルミ板を輪の形をしたのこぎりを高速回転させることで切断する。1ミリから15センチまでと幅広い厚さの板を依頼された寸法に切り分けていくが、許容される誤差はわずかプラス1ミリ。マイナスは一切許されない。

 傷や寸法のずれといったミスの大きな原因になるのが、切断中に出るアルミの切りくずだ。切りくずを吸引する装置はあるものの、一部はアルミ板を載せる台の上に残る。

 ごく小さな切りくずでもそのままの状態でアルミ板を載せて切断してしまうと、重みで傷がついたり、わずかな傾きが生じて寸法がずれたりする。切断後は必ず、エアーをかけ、毛ばたきで掃除。傷になり得るものをなるべく取り払う。

 それほど丁寧に作業を進めても傷がついてしまうことがある。切断後は表と裏に傷がないかを確かめ、さらに検査員が確認するという二重チェック体制を敷いている。1ミリに満たない傷でも返品の対象となってしまうからだ。

 丁寧さに加え、迅速さも求められる。注文が入った当日に出荷するものが全体の7割を占める。「どのタイミングでどんな注文がどれだけくるかはその日にならないとわかりません。1時間に1回手元に届く伝票を見て瞬時に作業の優先順位をつけます」

 短い納期で高品質な商品を届けるために大切にしているのは、「時間管理と整理整頓」だという。「どれから取りかかるか、隙間時間に何をやるかを常に考えながら仕事をしています。でも焦ると雑になりがちなので、平常心を心がけています。片付けや掃除をしっかりやることが結果として迅速で正確な仕事につながっていると思います」

 今年4月、アルミ加工の達人として、社内資格のマイスターに認定された。優れた技能を伝えるべく、後進の指導、育成にも力を入れる毎日だ。

「技術を磨くことも大切ですが、まずは安全に作業することの重要性を訴えています」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2024年7月22日号