過酷な状況下で練習を続ける選手たち。しかし、佳子さまはウクライナの選手らへの声かけで、こうした話題に触れることはなかった。選手が、「普通の会話」と表現したように、当たり障りないやり取りに終始している。
今回の主催元である日本テニス協会も、こう説明する。
「ウクライナ戦の抽選会だからお出ましいただいた、ということは聞いておりません。特にスポーツは、政治とは距離を置いて行なわれるべきものですから。宮内庁には、10月の楽天ジャパンオープン、全日本テニス選手権、そしてジーン・キング・カップの三つの行事について、名誉総裁である佳子内親王殿下のお出まし願いを申請し、すべてお越しいただけたということです」
皇室と政治の距離
たしかに「皇室は政治に介在しない」という大前提はある。しかし、天皇や皇族方は誕生日会見を通じて、紛争や戦争に触れて思いを寄せることもある。
佳子さまが、「東京や日本の印象」しか口にしなかったことについて、やや物足りない気がしないでもない。
なぜ「普通の会話」に終始したのか。
皇室の事情をよく知る人物はこう解説する。
「紛争や軍事侵攻のように複数の国が介在する場合は、非常にデリケートです。一方の国だけに思いを寄せる発言にならないよう、慎重に言葉を選ばなくてはならない。その意味では、直接的にお見舞いの言葉などを口にされなかったのは、内親王としては『正解』でしょう」
天皇や皇族の発言は、重い。特に紛争などが関係する場合は、より機微な配慮が必要だ。
過去には、こうした事例もあった。
2002年に開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)日韓大会。横浜で開催された決勝戦には、各国の元首や王室も観戦に訪れた。
共催国の金大中・韓国大統領(当時)は、前日の会見で天皇陛下(現・上皇さま)がこのW杯共催によって両国の理解と信頼感が深まることへの願いを述べたことに触れて、こう述べた。
「まったくその通りになりました。期待していた以上です」
陛下もこう応じた。
「私もそう思います」