国民の身近な存在であろうとする皇室。さまざまな人たちと言葉を交わし、触れ合う皇族方の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2022年11月13日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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「東京はどうですか」
「日本に来てどのような気持ちですか」
11月10日、テニスの国別対抗戦の抽選式に出席した秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまは、笑顔でウクライナの選手に話しかけた。
11日、12日の2日間にかけて行なわれる「2022ビリー・ジーン・キング・カップの日本対ウクライナ戦。その抽選式に、「日本テニス協会」の名誉総裁として佳子さまが出席した。抽選の箱からテニスボールを引いたあと、ウクライナと日本の代表選手の前まで歩き、一人ひとりに話しかけた。
記者会見で佳子さまとの会話の内容を聞かれたウクライナ選手らは、会話の様子をこう振り返った。
「自分から話しかけていいのかもわからなかったので、ドキドキした」
「東京の印象はどうですか、と普通の会話だなと思いました」
すると別の選手は、こうつけ加えた。
「とてもお優しく、日本に来てどのような気持ちですか、とたずねられました。これは、『すべて大丈夫ですか』というお気遣いをいただいたと思っています」
プリンセスとの「普通の会話」
その後、質問に答える形で、選手らはロシアの軍事侵攻が続く中での「ウクライナ代表選手」としての日々について語った。選手やチームの関係者は、欧州や近隣の国で練習を続けている。しかし、家族や親族はウクライナに残されたままだ。
ウクライナのリュドミラ・キチェノク選手は、
「(軍事侵攻の)悪いニュースを耳にするのはとても辛いでも、祖国で耐えている親族や国民と同じように、自分も精神的に強くならなければと言い聞かせています」
また、マルタ・コスチェク選手は、こう続けた。
「私たちはすでに選手として出来上がっているからいい。しかし、祖国に残っている若い選手や子どもたちの育成環境の方が問題だ」
ウクライナのミハイル・フィリマ監督は、自身が所属する同国内のテニスクラブの現状について、「例を一つ挙げたい」とこう吐露した。
「空襲警報が鳴るたびに地下に避難するという状況下で、子どもたちは練習をしている。ウクライナにとって酷い時期だが、これが早く終わると信じている」
話しながら涙を指で拭う選手もいた。