マンガ/中川いさみ
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 「この人覚えてる?」「これなにか知ってる?」。認知症の身内にはつい、そんな言葉を掛けて記憶力がどんなものか試してみたくなる。理学療法士・川畑智氏は、こうしたクイズは相手を追い詰めることになると指摘する。著書「ボケ、のち晴れ」(アスコム)から一部を抜粋し、認知症の人と接するときの注意点を紹介する。

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 認知症の方のご家族に、「絶対にやめてください」とお願いしていることがあります。それは、「記憶の確認クイズ」を出してしまうこと。
 

試されるクイズは苦痛

「今日は何月何日か言える?」

「今どこにいるのか、わかる?」

「孫も連れてきたよ。名前なんだったっけ? 前も来たでしょう?」

 施設に面会に来られるご家族でも、このように質問を畳みかけるケースが少なくありません。認知症がどれだけ進んでいるのか確かめたくて、つい聞いてしまう気持ちはよくわかりますが、認知症になっても、人格やプライドは当然残っています。

 試されるようなクイズは、苦痛でしかありません。

 ましてや、答えられなかったら自信を失いますし、ご家族も「前より悪くなった」とショックを受けます。お互いが、曇りを通り越して「大雨」になってしまうような質問を、あえてする必要はありませんよね。

 認知症になると、記憶障害とともに、「見当識障害」が始まります。

 「見当識」とは、「時間」「場所」「人」、つまり「いつ」「どこ」「誰」に関わる認知機能のことです。アルツハイマー型認知症では、比較的初期の段階でわからなくなるのが「いつ」と「どこ」。そして中期になると「誰」が苦手になります。

 人の顔がわからなくなる症状を「相貌失認」と呼びます。

 私たちは、人の顔を「後側頭葉」と呼ばれる場所で覚えています。さらに、家族のような大切な人の顔は、側頭葉の先端にある「側頭極」で記憶します。顔は顔でも違う場所で覚えていて、家族の顔は忘れにくいのですが、症状が進行したり、施設などに入居して毎日顔を合わせなくなったりすると、記憶から抜けてしまったり、別の人と間違ってしまうことも増えていきます。

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試みが失敗することもある