結果的に的外れな提案となったことをお嫁さんに謝罪しながらも、このとき、解決に向けた一筋の光が差していました。

「なるほど。大切な置き手紙だから、なくさないようにしまっておかなきゃという心理か。高田さんは、本当にまじめな人なんだな」
 

ホワイトボード1枚で「晴れ」はつくれる

 その反省から、次に、しまうことのできないホワイトボードを買って渡したら、これが大当たり!

 高田さんの家の電話の横に置いてもらい、お嫁さんが毎朝、電話で伝える予定を、自分で書いてもらいます。毎朝、昨日の予定を消して新たに書き記すわけですから、そこに書いてあることは、すなわち「今日の予定」だと高田さんにもわかります。

 また、「○○さんと会う約束だったよね」「みんな待っているから行ってね」という具合に心を揺さぶるメッセージを添えてもらったのも、効果的でした。

 こうして高田さんの問題は、ホワイトボード1枚で解決することができました。高田さんは、お嫁さんの手紙をなくしたのではなく、大切にしまっていたのです。

 どこにしまったか、そのこと自体は忘れてしまったのですが、お嫁さんの気持ちだけは、しっかり届いていました。 「失敗は成功の母」と言いますが、曇りのち晴れ、雨ときどき晴れのつもりでいてください。

 失敗を繰り返しながらも、少しずつ解決に向かっていきます。

 考えること、試してみることをやめないことですね。

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川畑 智

川畑 智

かわばた・さとし/理学療法士 熊本県認知症予防プログラム開発者 株式会社Re学代表。1979年宮崎県生まれ。理学療法士として病院や施設でリハビリに従事した後、2015年に株式会社Re学設立。熊本県を拠点に病院・施設における認知症予防や認知症ケアの実践に取り組む。

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